「ビニール傘」なのに…上品コーデしたくなる エリザベス女王が愛したフルトン
■革新的なフレーム考案 レイングッズで英トップに
ロイヤルファミリーを魅了したフルトンの歴史を改めて振り返ってみよう。創業は1956年、発明家であり技術者だったアーノルド・フルトンがロンドンのイーストエンドで小さな傘工場をスタートさせたのが始まりだ。アーノルドは傘の耐風性を高めるため、生地を支える親骨を従来の8本から10本に増やし、さび防止のためにニッケル素材を使うなど、それまでの傘の構造とは一線を画すアイデアでフレームを改良。高品質で革新的、高いデザイン性を追求した傘を生み出した。 ちなみに英国で雨傘が使われるようになったのは、フルトンの誕生から遡ること約2世紀、18世紀に入ってからのことである。当時は雨よけではなく、女性たちのパラソル(日よけ)としての役割が主流だった。 英国紳士で初めて雨傘を使用したのは1750年頃、海運業で富を得た旅行家のジョナス・ハンウェイが最初だ。当初はまったく世間に受け入れられず、「男性が傘を差すなんて……」などと嘲笑されたり、嫌がらせを受けたりしたという。 そんな批判を浴びながらもハンウェイは辛抱強く雨傘を使い続け、その実用性が徐々に浸透し始めると、雨傘を手にしたスタイルが「ハンウェイ風」と言われるまでに流行。当時の「紳士の嗜(たしな)み」と言われたステッキの要素を取り入れた細巻きデザインの傘は、英国紳士のステータスシンボルと見なされるようになり、高級傘メーカーが次々と創業した。 一方、1956年創業のフルトンは、英国淑女の代表であるエリザベス女王がコーディネートに合わせて手にする「バードケージ」のように、独自の機能性を持ちながらも、使う人に喜びや楽しさを与えるファッション性の高さが魅力のひとつ。さらに取得した特許や商標登録の数の多さからも分かる通り、創業者アーノルドの技術革新への情熱を引き継ぎ、ものづくりへのこだわりと品質管理を徹底している。そうした企業努力が実り、後発ブランドでありながらも、いまや英国国内のトップシェアを誇るレイングッズ・ブランドへと成長を遂げている。