谷村新司、チバユウスケ、hide、REITA、PANTA……追悼ライブの意義、語り継がれるアーティストたちの遺産
我々人間、そしてアーティストに否応なくやってくる死に、時折音楽ファンは心を痛める。どんな才能を持った音楽家にも平等に訪れる死、この世界の理すらも恨みたくなるような気持ちになる。ファンであることやそのアーティストが作り出した音楽に触れていたかを問わず、音楽好きであればどのアーティストの死には、悲しみを感じてしまうのではないだろうか。ファンであれば、ともに音楽を生み出してきた盟友であれば、その思いはなおさらだ。そんな悲しみを形を変えて共有し、そしてあらためて慈しみ、弔うのが“追悼ライブ”だ。 【写真】生前のチバユウスケ 昨年10月に74歳でこの世を去った谷村新司。シンガーソングライターとして、そしてフォークバンド・アリスのリーダーとして精力的に活動してきた谷村の追悼ライブ『谷村新司追悼特別企画「アリスコンサート2024 ALICE FOREVER ~アリガトウ~」』は、今年9月18日に日本武道館で行われ、10月13日には大阪城ホールでの開催も控えている。アリスのメンバーである堀内孝雄(Vo/Gt)、そして矢沢透(Dr/Per)の生演奏に谷村の生前の声と映像をシンクロさせる本公演。シンガーソングライターとしても自身がリリースした「昴ーすばるー」だけでなく、山口百恵に提供した「いい日旅立ち」など、現在も歌い聴き継がれる楽曲も数多い谷村ではあるが、追悼公演がアリスによるものだったのは、彼の原点にして帰る場所は“やはりアリスだった”ということを証明したといえるだろう。フォークバンドでありながらも時にロック的なダイナミズムも交差させるアリスにおける谷村の存在感は、この先も不変だ。 THEE MICHELLE GUN ELEPHANT、そしてThe Birthdayでもロックの金字塔を打ち立て続けてきたチバユウスケも昨年11月、55歳という若さでこの世を去ってしまった。9月28日に福島県・猪苗代湖畔 天神浜で開催された音楽フェス『オハラ☆ブレイク’24 愛でぬりつぶせ』は、今年はチバへの追悼、リスペクトの意味を込めて開催された。1日を通して猪苗代湖がチバへのリスペクトに溢れたこの日のステージは、前半が出演バンド/アーティストによる単独ステージ、そして後半には出演アーティストによる豪華なセッションが展開された。セッションパートにはクハラカズユキ(Dr)、ウエノコウジ(Ba)、ヒライハルキ(Ba)といったTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTやThe Birthdayでともにしたバンドメンバーと、チバと親交の深かった古市コータロー(Gt)が演奏を担当し、奥田民生や甲本ヒロト、吉井和哉、TOSHI-LOW、神野美伽、DISH//の北村匠海、のんという錚々たる面々がチバが遺した楽曲を歌い継ぐという、贅沢でありながらもリスペクトと溢れたひと時となり、まさしく各出演アーティストの愛が悲しみを塗りつぶすような夜となった。 『オハラ☆ブレイク』のようにこの世を去ってしまったアーティストが生前残した楽曲を、ゆかりのアーティストが歌い継ぐことで追悼と敬愛の念を込めるイベントは他にも開催されている。5月に川崎・CLUB CITTA'で開催された『hide Memorial Day 2024 ~Sing along Live “Hi-Ho!”~』は、1998年5月に急逝したX JAPANのギタリスト hideが今年12月に生誕60周年を迎えることを記念して開催された追悼イベントだ。これまでも毎年のように開催されてきた同イベントだが、今年のゲストには氣志團の綾小路翔やSOPHIAの松岡充など自身の音楽性にもhideからの影響を感じさせるアーティストから、chayやEXILEのSHOKICHIなど、さまざまなジャンルで活躍するアーティストが登場。イベントの最後には全出演者が登場し、イベントタイトルにも掲げられた「Hi-Ho」を歌い継いで大団円を迎えたという。hideが遺したロックイズムは、死去から25年以上が経過した今もなお受け継がれ続けていることがひしひしと感じられる追悼ライブだ。