夏は「100回に1回の試合」で勝利。試合経験を重ね、逞しく成長した秋田商が再び1-0で明桜の3連覇を阻止!
[10.19 選手権秋田県予選準決勝 明桜高 0-1 秋田商高 ソユスタ] 秋田を代表する名門校が2連覇中の王者を撃破――。第103回全国高校サッカー選手権秋田県予選準決勝が19日に行われ、3連覇を狙う明桜高と全国最多47度目の選手権出場を目指す秋田商高が激突。後半39分に交代出場FW安藤愛知(3年)が決勝点を決め、秋田商が1-0で勝った。秋田商は26日の決勝で西目高と戦う。 【写真】伊東純也ら欧州組9選手の秋冬コーデに大反響「黒髪もステキ」「これはずるい」「まじ俳優レベル」 この日と同じく雨中で行われた前回大会決勝は、明桜が2-0で秋田商に勝利。明桜は今年の県1部リーグも同校に4-0、3-1で勝利している。だが、インターハイ予選準々決勝では、「100回に1回の試合」(小林克監督)をやり切った秋田商が1-0で勝利。指揮官が「もう100回ぐらい試合を、こう修行しないと次は勝てないなと思って。夏はマッチ、マッチ、マッチで色々なとこと試合やって揉まれて、それで何か逞しくはなったんだと思います」と目を細めたように、秋田商が“100回に1回の勝利”からの成長を示し、決勝への切符を勝ち取った。 明桜は前回大会で全国大会初白星を挙げ、ベスト16進出。原美彦前監督(現福井工業大監督)が退任し、八千代高(千葉)を選手権3位へ導いた実績を持つ砂金伸監督が今春から指揮を執っている。県1部リーグでは12勝1分、69得点5失点と圧倒的な力を示して優勝。準決勝の先発はGKが佐藤瑠耶(3年)、DFは右から佐々木永翔(3年)、山口滉生主将(3年)、大木源士郎(3年)、朴智晟(3年)の4バック。中盤は近江谷厳心(2年)と庄司郁哉(3年)のダブルボランチ、齊藤廉(3年)がトップ下を務め、前線は右に片岡怜央(3年)、左に高橋颯翔(2年)、中央に廣森輝星(3年)がそれぞれ入った。 一方の秋田商は県1部リーグでは負け越して終わっているものの、この大会にかけてチーム作りを進めてきた。準決勝の先発は、GKが鎌田航希(1年)、DFは右から瀬川哲平(1年)、籾山怜央(3年)、塩寺大翔主将(3年)、佐藤奏愛(3年)の4バック。中盤はアンカー気味に構える塩遥音(3年)と齊藤優斗(1年)がダブルボランチを組み、右SH村田珀(2年)、左SH田近悠(3年)、前線は諸澤勇仁(3年)と木村怜央(3年)が2トップを組んだ。 前半、明桜はトップ下の齊藤を活用してサイド攻撃。右の片岡が縦、中へ仕掛け、11分にはエース廣森の右足シュートから3連続でシュートを放ったが、いずれも秋田商DF陣が立ちはだかる。明桜は13分にも廣森がシュートへ持ち込んだが、秋田商DFが再びブロックして枠外へ。この日、秋田商は1年生GK鎌田が鋭い反応を見せていたのに加え、各選手が集中力高く守っていた。 塩寺は「チャレンジャーとして、やっぱ全員が相手の方が強いって気持ちで、チームで戦うことを意識しました。コンパクトに守備するっていうのは全員で意識していて、1人が行ったら1人がカバーしたり、1人がブロックして1人がクリアしたり、1枚に対して2枚で行くっていうことを意識しました」と説明する。4バックを中心にゴール前で赤い壁となって前後半ともにシュートブロックを連発。セカンドボールへの反応も速く、得点を許さない。 小林監督は「毎試合こうだといいんですけど。どうやったらこうなるのか分からないですけど、今日は良かったです。ずっと明桜さんには3点、4点取られて負けている試合が多くて。シュートは上手いので、やっぱり寄せて自分の体にぶつかるぐらいじゃないと止めれないなっていう話はしてたんですけど、勝ちたいっていう気持ちが多分前に押し詰めたんだと思います」と分析。特に前半は守備重視で入っていたこともあり、好守に結びついたようだ。 秋田商は明桜対策で先発起用された木村が前線で抜群の運動量を発揮するなど、連動した守備で相手の攻撃を限定。後方では長身レフティのCB塩寺が再三インターセプトしていた。また、籾山や佐藤が対人守備で相手選手にアタックし、小林監督が「相当が効いていました。いいところを見てたし」と評した塩も回収力を発揮。守備一辺倒にならず攻守で強さを見せていた1年生MF齋藤や諸澤を起点に攻め返し、前半22分には塩の左CKから諸澤がクロスバー直撃のヘッドを放った。 奪ったボールを1タッチで繋ぐなど速攻。田近と村田の両ワイドも縦への仕掛けを見せるなど押し返す。主導権を握って攻める明桜も1タッチパスを縦に差し込み、テンポ良くボールを動かしながら相手ゴールを目指す。31分には左クロスを齊藤が頭で狙い、35分にも右クロスをファーの廣森が頭で合わせる。 だが、このシュートは秋田商GK鎌田が横っ飛びでキャッチ。明桜は庄司の運ぶドリブルや展開力に長けた近江谷のサイドチェンジでゲームをコントロールし、後半に存在感を増した高橋が左サイドを打開する。相手の苦しいクリアを拾って連続攻撃。廣森のシュートなどで相手にプレッシャーを掛けるが、秋田商は崩れない。 秋田商は後半19分、田近、諸澤、木村を安藤、MF鈴木周真(3年)、FW太田惇晴(3年)へ3枚替え。小林監督はこの意図について、「何かやらないと勝てない相手なんで。何か仕掛けるとなったら、交代の回数も3回と制限があるので、1度に流れを変えたいなと」。午前中の大雨から試合後半には天候が落ち着くという予報も決断を後押しした。試合当日にスタッフや主将の塩寺と相談し、テクニカルな鈴木らをより力を発揮しやすい環境で起用することを決定。交代組の3人にも勝負どころでの投入を伝えて準備させていた。 だが、明桜のプレッシャーは速く、秋田商はなかなか仕掛けるシーンを増やすことができない。明桜は22分に廣森をMF遠藤拓斗(1年)へ、35分には片岡と高橋をFW北川学(3年)と山本比優(1年)へ入れ替えた。ボールを保持し、主将の山口が中央から攻め上がるなど何とか相手の守りを破ろうとするが、秋田商は際の攻防に強く、明桜の砂金監督も「ゴール前が堅かったですね。シュートブロックっていうところは、そこはやっぱり凄いなと思います」と認めていた。試合は0-0のまま最終盤へ。迎えた39分、秋田商が1チャンスをモノにする。 左サイドから押し込むと、瀬川が縦へのドリブルからマイナスのパス。これを左中間で受けた安藤が「パス出すか、シュート打つか迷ったんですけど、ちょっと決めれるかなって思って」縦へ持ち込んで左足を振り抜く。対角の一撃が逆サイドのネットを揺らし、1-0となった。少ない人数で相手の大応援に対抗していた控え部員の声にも応える一撃。勝負の3枚替えも見事に実を結び、リードを奪った。 すぐ反撃を開始した明桜に対し、秋田商はMF高橋玄太(2年)を投入して試合を締めに行く。明桜は相手に跳ね返されても攻め続け、朴の左足FKなどで1点を目指したが、秋田商が1-0で逃げ切った。 秋田商は明桜の力を理解し、自分たちのやるべきことを貫いて決勝進出。決勝のカードは、14度目の選手権出場を狙う西目との伝統校対決となった。小林監督は「(西目にはインターハイ予選の)決勝で1-0で負けましたので、借りを返すではないですけど、やっぱり秋田と言ったら赤(秋田商)と黄色(西目)の戦いだと思います。もうそこは歴史があるので、やっぱり皆さんに喜んでもらえるような熱い試合をして、結果を残せればいいなと思います」と力を込めた。 また、1年生守護神の鎌田は、「決勝で負けちゃったら1回戦敗退と一緒。西目はインターハイにも出てるんですけど、しっかりとチーム全体で勝てるように、明日からの練習からしっかりまた気持ちをリセットして、決勝でしっかり勝って、全国で頑張っていきたいと思います」と宣言した。チームは夏の西目戦で課題となったフィジカル面や走力で進化。成長を続ける名門校が決勝でも勝ち切り、47度目の選手権出場を果たす。