40代50代「更年期にさしかかる女性」が知っておきたい「医療との上手な付き合い方」とは?【専門医が解説】
「病院に行きたくない」のはあなたのせいではない。仕組みの側にも落とし穴がある
――病院にかかることに対する抵抗はずいぶん減ったように思いますが、それでもまだ「行くのに勇気が必要」という声も上がります。 更年期医療の落とし穴はもう一つ、医療の仕組みの側にもあります。昨今ではよく言われるようになりましたが、長い時間をかけてカウンセリングを行っても管理料などの加算がないため、たとえば心療内科が行うような丁寧なヒアリングは現状の婦人科の現場では誰もができることではないのです。ですから、積極的に更年期障害に関わろうとする意欲のある医師を探して受診したほうが、求める医療とのミスマッチが起きないと思います。 「婦人科医が塩対応だった」「私の話を全然聞いてもらえず、はいはい更年期ね漢方薬出しておきますと流された」というようなご不満もまだまだ耳にします。日本女性医学学会に女性ヘルスケア専門医の地域別リストがありますので[hidefeed](こちらから)[/hidefeed]、確認してもらいたいと思います。更年期医療は敷居の高い話ではなく、女性ヘルスケア専門医も増えていますから、今後とも専門性の高い診療を提供するネットワークを広げていきたいと思います。 20年以上に渡って日本女性医学学会は更年期障害のカウンセリングに何かしらのインセンティブをつけたいと働きかけてきました。たとえば、器質性月経困難症のホルモン療法は特定疾患管理料が3年前につき、医療側の対応に変化が見られました。更年期障害も同様に繊細な問題で、治療には時間もかかりますから、ぜひ女性の皆さんも治療で元気を取り戻したら次に続く人たちのために声を上げていっていただきたいです。 ――もうひとつ、風邪のときの体温のような客観数値がないため、「こんなことで受診していいのか」という迷いはみなさん常にお持ちです。 「こんな悩みでお医者さんにかかっていいんでしょうか」などは一切考えず、辛さがあるなら受診していいのです。たとえば70歳の女性が「年齢的に違うとは思うのですが、症状が合致するので、更年期かPMSなのではと悩み抜いて」とお見えになった例がありました。 先ほど更年期障害での受診者が20万人という話をしました。厚労省の調査では診断のついている人が20万人、いろいろな数値から推定すると有症状者が200万ではあるものの、受診していない人の症状が軽いと言っているわけではありません。ほてり・のぼせなどの血管神経症状、、抑うつ・不安などの精神症状で苦しんではいるけれど、受診してもよい治療は存在しないと思って我慢している人が大勢います。また、以前受診して嫌な思いをした、自分のことで病院に行く時間なんてない、更年期症状は命に係わるわけではないし我慢すればいいと思っている人もまだまだいます。自分の症状が病気であると認識しておらず、あとから「更年期障害だった」と気づく人もいます。 繰り返しますが「なんとなく調子が悪い」「軽いと思うけれどもいろいろな面で支障がある」という人はいちど病院にきてみるという発想でOK、てっきり更年期だからと思っていたけれど受診したらそれ以外の原因が見つかることもあります。調子が悪い、支障があるということを放置しておいてよいことはないのです。 更年期外来を受診する人たちの主訴でいちばん多いのはデータ上でも、肩こり、疲れなど、更年期特有ではない一般的な身体症状です。そんな方が8割くらい。5割くらいの方がほてりやのぼせを訴え、同時に抑うつ、不安、不眠を5割ほどが訴えます。 ここまでの前編記事では更年期障害での受診の心得を伺いました。続く後編記事では「これって更年期?それとも老化?」「この症状で病院に行っていいの?」具体的な質問に答えをいただきます。
オトナサローネ編集部 井一美穂