40代50代「更年期にさしかかる女性」が知っておきたい「医療との上手な付き合い方」とは?【専門医が解説】
「この20年の間、更年期障害の病態は変化がなくとも、メディアで取り上げられる機会は増え、それとともに行政、官公庁や政治家が課題に向き合いはじめました。結果的に、『働く女性の健康問題として何とかしなければ』という認識が社会に広がりました」 【データ】更年期の始まりのサインと気づいた年齢は? こう語るのは、長年に渡り更年期医療をリードしてきた東京医科歯科大学大学院教授の寺内公一先生です。幅広い、ときには込み入った症例と向き合うこともある更年期医療の第一人者に、詳しい話を伺いました。
更年期に差し掛かるみなさんがぜひ「知っておいてほしい」こととは
――更年期障害を取り巻く環境は、ここ数年で大きく変わったと思います。出版社サイドから見ても、女性ファッション誌が表紙に「更年期」と書けるようになったのは変化です。 5年ほど前から「更年期障害による経済損失は男女合わせて年間6300億円」などの情報が出るようになり、「この問題は社会全体で解決していかないとならない」認識が広がりました。ビジネスとしてこうした課題に取り組むフェムテック企業も増えたことは歓迎していますが、いっぽうで単なるビジネスチャンスと捉えた参入も見られ、すべてに同じように効果があるかは吟味が必要だと感じます。 私たち医業は、患者さんに向き合い、状態を診察しながらテーラーメイドに治療方法を考え行えることが存在理由だと思っています。いっぽう、患者さん側からすると方法は何であれ不調が治ればいいわけですから、検索すると出てくるさまざまな民間サービスで、自分の不調に向き合ってもらえることがわかるのはメリットでしょう。 更年期障害の患者さんは推定200万人存在すると考えられていますが、通院しているのは20万人。90%はセルフメディケーションで対応しているのです。この人たちがすべて「よい」サービスにつながっていればいいのですが、実際にはフェムテックを称してはいるけれどもアプリに症状を入力して終わりという低品質のものも存在します。 ――まだまだ更年期障害の実情が正しく知られておらず、また、正しく説明されていないこともあるのでしょうか。 日本は医療へのアクセスが非常によい国です。だからこそ、患者さんたちも「ヘルスリテラシー」を強化し続ける必要があります。「低品質なサービス」に引っかかるリスクもあるため、ヘルスケアに限らず保険でも何でも同様ですが、どういう対策があって費用と時間はどのくらいかかるのかを把握しておくことがベターなのです。 更年期障害の治療のひとつ「ホルモン補充療法(HRT)」についても、何か特別な、条件をいくつもクリアしないと始められない高額な治療だと思っている人がまだまだいます。実際、閉経後女性のHRT実施率は2%程度です。しかし「標準治療」と呼ばれるこうした治療法は保険でカバーされ、かなり安価に提供されます。サプリメントを利用したセルフケアもよいですが、自分の体調に異変を感じた場合、もう少し気軽に標準治療を求めてもらってもいいのでははないかなと思います。