40代女性が困惑…生き別れた父親が遺していた予想外の「財産」、その「不思議な顛末」
生前、まったく会ったことのなかった故人の相続人となっていた……。こんな思いもよらない事態が突然、自分の身に降りかかってきたら、どのような対応を取るのがよいのでしょうか。相続をサポートする会社『夢相続』を運営する、相続実務士の曽根恵子さんが相談者である40代女性Kさんのケースから、相続に関する疑問を紐解いていきます。 【マンガ】メルカリで、利益がほとんどでない「300円出品」をする人の理由 Kさんのもとに、突然見知らぬ女性Yさんが現れます。聞けば、Yさんが遺贈を受けた土地に建っている建物がKさんの父親名義のため、解体を認める書類にハンコを押してほしい、とのことでした。Kさんは幼いころに両親が離婚して、女手ひとつで育てられており、すでに亡くなっている父親の記憶はほとんどありません。 建物の名義はKさんの父親、土地の名義はKさんの父親の妹だということで、Yさんはその妹から遺贈を受けたようです。建物にはKさんの父親、その妹と母親が住んでいて、母親(Kさんにとっての祖母)は健在だといいます。ハンコを素直に押しても良いものか、Kさんは判断に迷います。 記事前編は「『ハンコを押してくれないか』40代女性のもとに突然現れた『見知らぬ訪問者』、その要求が思いもよらなかった」から。
土地は使用貸借、借主の死亡により終了する
土地と建物の所有者が違う場合、建物の所有者土地の所有者から借りている状態と言えます。本来であれば地代や権利金を払って建てるところですが、親族の場合はタダでかりている使用貸借のことがよくあるパターンです。Kさんの父親の場合も、おそらく使用貸借の状態で土地を無償で借りて、建物を建てたのではないかと推測されます。 父親が先に亡くなっていますので、建物を妹に遺贈する手続きをしていればKさんに話が来ることはなかったのですが、そうした手続きはされておらず、現在も建物の名義は亡くなった父親のままとなっています。 ところが、今回法的に問題となるのは、借主である父親が亡くなっていますので、死亡により使用貸借契約が終了するか否か、という点になります。 当社の業務提携先の弁護士に確認したところ、この点については、民法597条3項において、「使用貸借は、借主の死亡によって終了する」と規定されおり、原則論でいえば、この条項が適用され、借主死亡により使用貸借契約は終了するため、建物所有者は、建物を収去し、土地を明け渡す必要がありますという回答でした。