イチローはどこまで記録を伸ばすことが可能か?
この想定通りだとして、2021年のシーズンを終えたとき、イチローは日米通算5000安打まであと362本、大リーグ通算4000安打まであと640本だが、イチローが公言しているように50歳まで現役を続けるとしたらさらに3年あり、年間安打数を同じく66本とすれば、2024年終了時に日米通算5000安打まであと164本、大リーグ通算4000安打まであと442本と迫っている計算だ。 こうなると50歳まで現役を続けても、年間66本ペースでは到底、日米通算5000安打にも、大リーグ通算4000安打にも届かなくなる。イチロー自身、「でも(年間)200本、5年やればね。なっちゃいますからね」と大リーグ通算4000安打の可能性を口にしたが、それでも最低5年はかかるのである。200本とは言わなくても、せめて年間100本ペースならというところだが、さらにその前に保守的な大リーグで50歳まで契約してくれるところがあるかどうかが障害となってくる。 来季に関してはチームオプションで、マーリンズが行使する可能性が高い。となると、フリーエージェントになるのは来季オフだが、この年齢になると、年々、見方がシビアになる。結果が出ないと、すぐに“衰えた”と判を押す。 だが、奇しくもそんな捉え方に、イチローは先日の会見で抗うように言った。 「走ること、投げること、というのは分かりやすく計ることが出来る。それを見たときに、例えば走ることは明らかに速くなってしまっているので、諦めることは出来ないんですよね。これがスピードも落ちてしまった、とかっていうなら、なんとなく、あの人も時間が経ったんだなあっていう、それは、分からなくもないんですけど、残念ながら、スピードが上がってしまっているので、打つことだけ能力が落ちる、ということも考えにくい」 スピードに関してはその通りで、例えばヤンキース時代、一塁までの到達時間が4.0~4.1秒だったのが今、3.7~3.8秒になっている。 ただ、それでも多くの大リーグ関係者はそれを理解しないし、認めたくない。記録の前に偏見。投手と対戦する前に固定観念。戦うものが今後、厄介なものとなるが、それを一つ一つ覆したとき、次のマイルストーンが見えてくるのかもしれない。 イチローは1日(日本時間2日)、メッツ戦で7回の4打席目にレフト前ヒットを放った。これで、メジャー通算安打は、3013安打。ラファエル・パルメイロ(レンジャーズ)の歴代25位の通算3020安打の更新まであと7本に迫っているが、6試合連続の先発出場となった2日はノーヒットに終わった。 (文責・丹羽政善/米国在住スポーツライター)