新型マドンSLRデビュー! 二兎を追ったトレック、それは半端か万能か Part.1
いやいや……マドンの空力とエモンダの軽さを融合させられるのか?
では、ここから本稿の主役、8代目となる新型マドンへ目を移す。 新型のコンセプトは万能レーシングバイク。具体的な目標は「マドンの空力とエモンダの軽さを融合させること」だそう。 いやいや、それができなかったからマドンとエモンダを作り分けてたんですよね? と言いたくなるが、実際にエモンダとほぼ同じ軽さと、マドンと大差ない空力性能を身に付けているという。 万能機だったマドンが途中からエアロロードとなり、それに代わる軽量モデルとしてエモンダが出たはずなのに、いつのまにかエモンダまでエアロを意識するようになっていったのだから、開発リソースや選手・ユーザーが選ぶ際の混乱、在庫リスクなどを考えると、統合もむべなるかな、という気はするが。 フレーム素材はトレック表記でいうところのOCLV800からOCLV900へ。具体的な繊維の銘柄や弾性率などは公表されていないが、OCLV800より強度の高い繊維を採用したのだという。高強度系の繊維を使えば、強度を確保しつつより軽くできる。 成型方法も、単なるブラダーではなく、あらかじめフレーム形状になった芯材を使うことでより正確な加圧を行えるようになったという。ということは、余計な樹脂を効率よくバキュームできるようになったということであり、成形品の樹脂率が下がり、より軽くなる。その結果が、先代マドンよりフレームセットで320gの軽量化である。 なお、フレーム重量は760g、フォークは370g(いずれも未塗装)。本国向けの資料には、MLサイズの塗装済み(MaIe Gloss/Carbon Smoke、フレーム小物なし)の重量がフレーム:796g、フォーク:350gとの記載がある。
NEWマドン注目のポイント
先代マドンをちょっとスリムにしたという風情のチューブ形状だが、完全な新設計。「フルシステムフォイル」と名付けられた設計思想により、チューブ単体ではなく、リム、タイヤ、ボトルなどを含めたトータルの空力性能を高めたという。 現行エモンダや前作マドンではカムテール形状が多用されていたが、新型マドンのダウンチューブは丸みを帯びた四角断面。到底空力がいいようには見えないが、これはタイヤ&リムを含めた空力を考えた結果。 それに伴い、ボトル&ボトルケージは新型マドンのフレーム形状に合わせた専用品に。BMCやジャイアントやキャノンデールが先手を打った専用エアロボトルだが、トレックもそこに追いついたことになる。なお、このボトルケージには通常の円形ボトルも装着可能。 ステム一体型ハンドルも「フルシステムフォイル」思想に基づく新設計に。とはいえ、ハンドルバーは握って操作するものでもあるので、人間工学と空力のバランスを考慮した形状になっているという。レバー取り付け部よりドロップ部が3cm広いフレア形状で、プロジェクトワンでのオーダーではサイズが選択可能。 それらの結果、各チューブが細くなっているにもかかわらず、先代マドンと同等の空力性能を実現した。厳密に言えば、ヨー角0~10度前後では新型のほうに空力的アドバンテージがあり、10度以上になると先代のほうが速いというが、実世界で出現するヨー角の分布を考えると、総合的には新型のほうが優れているという。 空力だけでなく快適性向上にも一役買っているISOフロー部だが、サドル部分の快適性は先代マドン比で80%もアップ。エモンダと比べても24%向上しているそうだ。 フレームから伸びたISP状のシートチューブに専用シートポストを挿入する。この構造上、シートポストの調整幅を広く取ることはできず、いずれのサイズも上下幅に制限があり、各フレームサイズでサドルの最小高と最大高が決まっているので、購入前にはジオメトリを確認する必要がある。固定する臼のボルト位置が一か所だと、フレームに隠れて固定できない高さが生まれてしまうので、臼が上下反転する構造にすることで、調整幅を確保している。なお、シートポストは0mmオフセットのみで、XS~MDサイズにはショートタイプが、ML以上にはロングタイプが付属する。 リヤエンドにはUDH(ユニバーサル・ディレーラー・ハンガー)を採用。タイヤクリアランスは32C。 ジオメトリも一新された。従来は47、50、52、54、56、58、60、62という8サイズ展開だったが、新型マドンではXS、SM、MD、ML、LG、XLという表記の6サイズに。フレームサイズの数は減ってしまったが、フレームサイズとリーチ&スタックの関係がより直線的になっている。これにより、「サイズは減ったが適切なサイズを選びやすくなった」とのこと。