新型マドンSLRデビュー! 二兎を追ったトレック、それは半端か万能か Part.1
2003年から始まった、マドン簡史
そんな7代目マドンを見て、乗って、足りない頭でうんうんと考えて、基本絶賛の評価を下したのはたったの2年前のことである。最新エアロロードとして某メディアで風洞実験にかけたのなんかついこの間だ。それなのに、もう8代目のマドンが出るという。 いくらなんでも早すぎないか。つい最近マドンが納車されたオーナーさんもいるだろうに。と思ったが、それには訳があるらしい。 空力担当のマドンと軽量万能車のエモンダが統合されるからだ。車名としてはマドンが残り、エモンダは消滅。今後は、トレックのロードレース用自転車はマドンに一本化される。現行エモンダのデビューは2020年だから、8代目マドンは現行エモンダの後釜でもあることを考えると、さほど不自然なタイミングではない。 ここで、歴代マドンを振り返っておく。 MADONE 5。9。 トレックのロードラインナップにマドンという車名が加わったのは2003年のことだが、それまでの5200~5500~5900のオーソドックスな設計から脱するものではなかった。 しかし2007年デビューの2代目マドンは激変していた。滑らかで有機的なフレーム形状。フレームにBBベアリングを直接圧入するBB90。フレームから生えたシートチューブに専用シートポストを被せるシートマスト。独自規格で身を固め、一気にロードバイクシーンの最先端に躍り出たのである。 その後、マドンはさらなる洗練の境地に達した3代目、カムテールを採用しブレーキキャリパーをBB下に移動させるなど空力を意識した4代目と歩を進めるが、2015年に発表された5代目で純粋なエアロロードに変身する。2012年にエンデュランスロードのドマーネが、2014年に軽量万能バイクのエモンダがデビューしているから、マドンは空力に専念できるようになったのだ。 空力のために専用ブレーキ(このときはまだリムブレーキ)を開発し、徹底したフラッシュサーフェス化を追求。ヘッドチューブにフロントブレーキを格納するためのばね仕掛けの小さな扉まで設けてしまった。シートチューブは、しなりやすいインナーチューブとカムテール形状をしたアウターチューブの二重にし、さらにはシートチューブとトップチューブの交点にベアリングを仕込みまでして、快適性と空力性能の両立を狙った。 なんという技術の重畳。それは、トレックという技術主導型メーカーが建てた、ロードバイク史に残るバベルの塔だった。 MADONE SLR。 そんな5代目のブラッシュアップ版ともいえる6代目マドンを経て、冒頭に記したISOフロー採用の7代目マドンへ。このように、5~7代目はエアロロードとして生を受けたマドンだが、8代目となる新型でエモンダと統合し、再び軽量万能車として歩み始めることになる。「空力意識の万能車」というコンセプトを考えると、4代目へと先祖返りしたともとれる。