『ミス・ターゲット』すみれ、宗春、萌の思いが交錯 複雑に絡み合うそれぞれの糸
“大好きな人の大好きな人”を好きになってしまった萌(鈴木愛理)の苦悩
しかし、“おあいこ”にできなかった轟の部下・茶野(後藤剛範)が、「お前さえいなければ、兄貴(=轟)は元に戻るはずだから」とすみれを殺しにかかり、助けに駆けつけた宗春が重傷を負ってしまう事態に。手術をして一命を取り留めることができたのでホッとしたが、萌(鈴木愛理)の立場になって考えると、やっぱり苦しい。 すみれが刑務所に入っていた3年間、どん底まで落ちた宗春を支えてきたのは萌だった。「和菓子を作れないのなら、美味しい和菓子を食べるところから始めてみませんか?」「1歩ずつ。いや、0.1歩ずつ? 前に進んだらいいと思うんです」。そんなふうに、ゆっくりゆっくり。宗春と歩幅を合わせながら歩いてきて、「和月堂」はやっと大きなチャンスを掴むことができた。それなのに、宗春は大事な仕事よりもすみれを優先させて、目を覚ましたときも、真っ先に「すみれさん?」とつぶやいたのだ。 「気づいたら、好きになってて。大好きな人の大好きな人なのに。好きになっちゃいけない人なのに……」 この世界に、好きになっちゃいけない人はいないけれど、好きになってしまったら苦しくなってしまう人はいる。すみれのことが大好きで、すみれの魅力をたくさん知っている萌は、きっと心のどこかで“この人には敵わない”と思っているのだろう。だから、宗春のことを好きになりたくなかったし、出所したすみれとも正々堂々と戦う勇気がなかった。 生粋のワルは出てこない。みんながみんな、心の底から愛している人がいて、その人のために……と強く思っているからこそ、それぞれの糸が複雑に絡み合ってしまっている。いよいよ、最終回を迎える『ミス・ターゲット』。糸をバッサリ切るのではなく、ゆっくりゆっくり解き、それぞれが自分に合う道を見つけてほしい。
菜本かな