番記者が語る WBCを「クールで特別」に昇格させた大谷の功績 勝利へのこだわりとドラマチックな展開で魅了
試合後に確か、「出塁しようと決めていた」って言ったと思うけど、「決めていた」ってねえ。 確かに漫画の世界のことのようだった。彼の内面で起きていたことが、パフォーマンスとなって発揮されたシーンだった。 それが特別なアスリートである証なんだ。プレーを見ているだけで、その人を知っているかのような気分にさせてくれる。あの大会を通して、大谷の競争心の強さを思い知らされた。 もう1つ印象に残っているのが、大谷が決勝戦の前に行ったスピーチ。
彼もメジャーの選手に憧れてアメリカに来ていたから、チームメイトの心理を理解していたんだと思う。そういうことを全て断ち切らせて、みんな「俺の背中に飛び乗れ」みたいな感じだった。 日本で年功序列が大きな意味を持っているのは理解している。だからこそ、あそこで(最年長ではない)大谷が、ああいうスピーチをして序列を打ち破ったことで、日本社会にどんな影響を与えるのか興味がある。 スピーチの仕方も上手で素晴らしかった。優れた選手というだけでなく、優れたリーダーでもあるということが分かった。
■必ず「勝ち抜く」という使命 サム・ブラム(以下、サム) WBC期間中は、エンゼルスのスプリングトレーニングを取材していた。 大谷が最後の先発登板をした後に、エンゼルスの監督や選手に、大谷の活躍をどう思ったのか聞いた。もう大会では投げないということだったから。 でも、たしか準決勝で勝った後に、大谷がインタビューで、決勝戦での登板の可能性をほのめかしたんだ。それで球団はちょっと焦った。 「大変だ。シーズンで勝つためには、彼が必要なんだ。今シーズンは彼の健康状態にかかっているのに」って。でも大谷には、このトーナメントを勝ち抜くという使命があった。そして、それを成し遂げた。
結果的にも、最後の試合で投げたことがシーズンに影響を与えたとは全く思わない。僕が感じたのは、この大会で日本を優勝させるんだという大谷の強い決意。 ディランが言ったように、「塁に出る」「ヒットを打つ」という積極的な姿勢が感じられた。それが彼の大事な場面での思考回路なんだと思う。エンゼルスで、大舞台でのそういう姿を見ることができなかったのは残念だった。 あと、彼が日本人にとって、文化にとって、国にとってどれほど大きな存在なのかを実感した。彼のバッティング練習を見ようというファンで球場が満員になるんだから。野球という枠を遥かに超えた存在なんだろうね。