本格焼酎から霜降り肉まで!“麹”の力で日本の食文化を支える老舗メーカーの挑戦
本社は全国から客が集まるテーマパーク~広がる麹の可能性
鹿児島・霧島市。鹿児島空港のほど近くに焼酎の一升瓶のような建物がそびえる。河内菌を製造販売する河内源一郎商店だ。そこへ観光バスが入ってきた。ここは麹のテーマパークにもなっていて、全国から客が集まってくる。
河内菌を使った商品が並ぶ物販コーナーでは、オリジナル焼酎が無料で試飲できる。一番人気は米焼酎の「薩摩自顕流」(2310円)。日本酒のような吟醸香があり、IWSC世界酒類コンテストで「焼酎オブ・ザ・イヤー」を受賞したこともある逸品だ。
焼酎だけではない。旨みが増す調味料の塩麹や甘酒など、河内菌を活かした商品が勢ぞろい。一日55個限定という貴重な「塩麹シュークリーム」(440円)も。 カスタードの原料となる卵は、鶏の飼料に河内菌を混ぜて与えている。ビタミン豊富で味にはコクが出る。
館内にはレストランもある。売りは河内菌を食べさせて育てた豚肉料理だ。自社製造した「霧島高原ビール」(825円)を楽しむこともできる。 今年、施設内にホテルも作った(1泊2食付き2万5850円~)。宿泊客は料理教室も体験可能。この日は麹のプロから教わる味噌作り。蒸した大豆に河内菌で作った米麹と塩を混ぜ2カ月寝かせれば、自分だけの味噌になる。
河内源一郎商店会長・山元正博(74)は3代目。河内菌を使った商品を次々と手がけ、売り上げを7倍に伸ばしたやり手である。 「人ができないことを考えて結果が出たら楽しい。たぶん祖父もそうだった。DNAだと思います」(山元)
1931年、山元の祖父・河内源一郎が起こした河内商店。当時、焼酎は日本酒用の麹菌で作られていたが、暑い土地では腐らせてしまうことも多かった。現在の大阪大学の醸造科を卒業した源一郎はこの問題の改善に取り組んだ。 目をつけたのが沖縄の泡盛。暑くても腐敗しない麹菌を見つけ出し河内菌と名付けた。ちなみに河内菌は韓国にも広まり、現在ほとんどのマッコリは河内菌で作られていると言う。 多くの蔵元に感謝され源一郎は「麹の神様」と呼ばれるようになる。その河内菌を受け継いだ山元は年間1億円を投じ、麹の可能性を探る研究も行っている。