ぶいすぽっ!アニメ化、REJECTへ古参VTuber加入――活躍の場が広がるバーチャルタレントたち
■ぶいすぽっ!のアニメ展開から感じる「懐かしい香り」 ぶいすぽっ!から一風変わった展開が発表された。同グループを題材とした長編アニメーションプロジェクトだ。公式サイトにて公開された運営メッセージでは、第一章は2015年末に完成予定と告知されている。 【画像】公正取引委員会が発表したカバー社への指導内容 本プロジェクトはぶいすぽっ!メンバーが声を当てるバージョンと、プロの声優が当てるバージョンの2つが制作予定で、前者は応援プロジェクト「STUDIO MEMBERS」加入者限定コンテンツとして、後者は一般公開されるとのことだ。プロの声優が声を当てるとなると、いわば「実在するVTuberグループを題材としたアニメ」とも言える作品となり、新規層へのリーチも狙う展開であることがうかがえる。 バーチャルタレントのIP展開事例の一種として捉えることも可能だが、実はぶいすぽっ!は前身となる「0.2秒の物語」プロジェクト時代にプロジェクト内ゲーミングチーム・Lupinus Virtual Gamesを題材にした、ショートアニメ作品『0.2秒の物語』を公開している。同時期にはコミカライズ展開も予定されており(残念ながら中断してしまったが)、この時期を知っている人にとっては、“一周回ってきた”とも感じる展開だろうか。なお、「STUDIO MEMBERS」の申し込み期間は2025年1月31日までなので、気になる方はお早めに。 プロeスポーツチーム・REJECTには、新たなバーチャルストリーマーとして乾伸一郎が加入した。同氏は2018年のVTuber黎明期より活動する一人であり、ゲームの腕前もたしかなタレント。ちなみに、現在はTwitchを活動拠点としており、ゲームを中心に活動するストリーマー型VTuberの流れにも乗っている一人だ。 REJECTには彼以外にもバーチャルストリーマーが数名所属しており、『VRChat』での企画も話題になった天鬼ぷるるは、ワンオフの3Dモデルのお披露目に至った。いまや専門の事務所でなくともバーチャルタレントの所属は当たり前になりつつあり、3D化に至る展開も起こり得ると証明された形だ。バーチャルタレントが活動できる場所は、年々拡大し続けているといえよう。 一方、国内トップクラスの事務所・ホロライブプロダクション運営のカバー株式会社には、公正取引委員会より下請法の規定違反に基づく勧告がおこなわれた。主な内容は、タレント向けの2Dモデルや3Dモデル、動画向けイラストについて、納品後に「発注書等で示された仕様等からは作業が必要であることが分からないやり直し」を無償で下請事業者に行わせていた、というものだ。11月1日にはフリーランス新法が施行されるが、大手バーチャルタレント事業者にはより厳格な運営が求められていきそうだ。 ■『VRChat』向けアバターの着替えを簡単にする企業の取り組み イラストを描く感覚でVRM形式の3Dモデルを制作できるツール『VRoid Studio』では、「着せ替え機能」のオープンベータがスタートした。『VRChat』などを想定した3Dモデルへ、同じく『VRChat』向けの3D衣装や、VRoidモデル向け衣装を比較的簡単にフィッティングさせることができる機能だ。 現状、VR用アバター業界では「特定のアバター向けに形状調整した3D衣装」を販売するのが通例である。このため、基本的にはユーザー数の多いアバターへの調整が優先されることが多く、マイナーなアバターやワンオフアバターを愛用するユーザーは『Unity』や『Blender』などの3D制作ツールを持ち出し、自力で調整する必要がある。 「着せ替え機能」は、この調整作業を簡易化するものである。同時に、この機能に対応したアバター・衣装のデータ規格も生み出されており、理論上はVRMと同様、この規格のデータさえ用意すれば高い汎用性を確保できることになる。そうなればユーザーにとってもありがたいところだが、既存の文化との衝突が起こり得ることも想像に難くない。今後どのように合流、または棲み分けされていくだろうか。 「着せ替え機能」誕生の背景と推測される「『VRChat』向けアバターカスタマイズのハードル」に対し、「バーチャルマーケット」を展開するHIKKYも別のアプローチから切り込んでいる。ブラウザ上でキャラクタークリエイト感覚でアバターを作ることができる『Vket Avatar Maker』だ。 こちらでは、『VRChat』で人気のアバターが本ツールのカスタムパーツとして展開されるようになり、本記事執筆時点で5体のアバターデータが発売中だ。ブラウザ上で手軽に色味、衣装、頭身などをカスタマイズできる手軽さが売りであり、現在はVRM形式への書き出しが可能だ。そして将来的には『VRChat』への直接連携も予定されている。 現状はそこそこおぼえることが多い『VRChat』向けアバターの仕込みも、上記2つのサービスがしっかり完成すれば、一気にハードルが下がるだろう。一方で、自分の手で『Unity』とにらめっこしながら、理想のアバターを生み出す過程にも捨てがたい魅力がある。ライトユーザーからヘビーユーザーまで幅広く楽しめる土壌が生まれることを期待したい。
浅田カズラ