センバツ甲子園 明豊、頂点へあと1勝 スタンド800人、大喜び /大分
第93回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)準決勝の31日、明豊は中京大中京(愛知)を5―4で降し、春夏通じチーム初の決勝進出を決めた。センバツの県勢では1967年の大会で優勝した津久見以来、54年ぶり。明豊は5点を先取したものの、相手に追い上げられ九回裏は1点差に迫られたが、最後の打者を三塁ゴロに打ち取りかわした。「よかったよかった」「やばい」「すごい」。勝利の瞬間、一塁側スタンドからは喜びの声が漏れた。ナインは、昨年の春夏の甲子園が中止となって日本一を目指せなかった先輩の思いも背負い、1日、東海大相模(神奈川)との一戦に全てをかける。【辻本知大、荻野公一】 ベスト4となった2019年に続く準決勝。現チームの3年生は当時入学式前だったが、甲子園のスタンドに招かれ先輩たちの雄姿を目に焼き付けていた。ナインは「先輩を超えたい。勝ちにこだわる」と闘志を燃やし、グラウンドに現れた。 一回裏2死二、三塁のピンチで阿南(3年)が左翼線の飛球を好捕して相手の先制を阻み、準々決勝に続いてチームを救った。父智博さん(42)は「気持ちだけは負けてない子です。よくやった、最高です」とねぎらった。 好機にあと一打が出ない足踏みの展開を打破したのは四回表だった。竹下(2年)が左翼線安打で出塁したのを皮切りに、四死球や犠打で1死満塁の好機を作りそして塘原(3年)の犠飛で先制。続く太田(同)、簑原(同)、阿南が適時打を連発し一挙5点を奪って突き放した。 保護者会の和才竜也会長(40)は「『行けー』としか思いが浮かびません。昨秋の九州地区大会から全試合を見ているが、どんどん強くなっている」と笑顔を見せた。 その後、五、六回に1点と2点を返されたが、堅守は崩れなかった。2点のリードで九回を迎えると、野球部の応援団長、加藤柊汰さん(3年)は「ドキドキとワクワクが半分ずつです。甲子園は何が起きるか分からないけど、信じます」と固唾(かたず)をのんで見守った。 エース京本(同)がストライクを取るたび、一塁側から万雷の拍手が鳴った。1点差で勝った瞬間、集まった800人は大喜び。明豊の前身となった別府大付属高の卒業生で野球部OBの後藤明文・同窓会長(68)は「感謝、感動。言葉にならない。半世紀ぶりに大分に優勝旗を持ち帰ってくれ」と号泣した。 ◇OBも駆けつけ応援 ○…初の決勝進出を決めた明豊。これまで同校史上最高だった2年前のベスト4のメンバーで副主将だったJR西日本の野球部員、野辺優汰さん(19)と、投手だった大学2年生、寺迫涼生さん(同)もアルプス席に駆けつけた。出場を決めながら大会が中止になった昨年のメンバーと一緒にスティックバルーンを使って応援。四回に大量点を取った時には、みんなで円になって、当時の得点時にやっていた盛り上げを再現して喜んだ。野辺さんは「とにかく甲子園を楽しんでほしい」とエールを送った。寺迫さんは「すごい選手はいないが、仲がいい」と、持ち味のチームワークで決勝を戦い抜くよう願った。 ……………………………………………………………………………………………………… ■青春譜 ◇決勝もしっかり準備 太田虎次朗投手=3年 兄はプロ野球・巨人の太田龍投手。大一番を前に「ここまで来たら頑張れ」とLINEでメッセージをもらった。「ありがとう。絶対に勝ってくるわ」と返信した。 試合直前、今大会2度目の先発を告げられた。「直球で押していけば大丈夫、と言ってもらった。先発は試合の中で肩を慣らすという難しさがあるが、しっかり試合を作る意識で臨んだ」 101球の力投で6奪三振。昨秋は相手打者のことだけを考えて投球していた。「うちは守備が良い。安心して投げられる」。仲間と冬の練習を乗り越え、打たせて取るイメージができた。 同じ3年の京本、財原との継投で勝ち上がってきた。「自分のイニングを投げきるだけです」。仲間は「口数は少ないが芯の強さがある」と評価する。 「疲労感はない。決勝も投げる場面があると思うので、しっかり準備して日本一を取りたい」【辻本知大】 ……………………………………………………………………………………………………… ▽準決勝 明豊 000500000=5 000012001=4 中京大中京