岸田首相は支持率アップを期待していなかった?「不発」だった内閣改造 改めて分析したら見えてきた「内向き人事」の実態・データで読み解く政治(3)
岸田文雄首相は9月13日に内閣改造を実施し、第2次岸田再改造内閣を発足させた。物価高やマイナンバーカードを巡るトラブルなどで支持率が低迷する首相にとって、改造は国民に人心一新をアピールして政権浮揚につなげるチャンスだった。 だが、そんな好機も「不発」に終わった。共同通信が9月13、14日に行った緊急電話世論調査で、内閣支持率は39・8%(前回8月19、20日は33・6%)。調査方法の変更もあるため単純比較はできないものの、新内閣や改造内閣発足後の支持率としては、自民党が政権を奪還した2012年以降で最低だった。他の報道各社の世論調査でも目立った上昇は見られなかった。 公明党の山口那津男代表は9月24日に放送されたBS朝日番組で、原因は人事の内容にあると指摘している。「自民党の派閥推薦を多く採ったと言われている。内向きで国民にアピールしきれなかった」 国民の支持を取り戻すせっかくの機会に、「党内向け」に傾斜したというのも不思議な話だ。だが確かに、過去のデータとも比べながら改めて顔触れを分析すると、刷新感を出したと思われる部分も含めて首相自身の足場を固める意図が透ける。
結局、今回の内閣改造で首相は何がしたかったのだろう。専門家はこんな見方を示している。「来年秋の自民党総裁選に向けた党内対策が優先で、支持率アップには期待していなかったのではないか」(共同通信=中田良太) ▽派閥バランスへの配慮は従来通りだが、重要ポストの留任が目立った まず、今回の人事を派閥の視点から振り返ってみる。 自民党総裁でもある首相にとって、党内の各派閥に閣僚ポストをどう割り振るのかは重要なポイントだ。バランスを欠けば、冷遇された派閥に不満がたまり、党内基盤の不安定化につながりかねない。 そのため、派閥への配慮は珍しいことではなく、安倍晋三元首相や菅義偉前首相も首相在任時は一定の配慮を見せてきた。 今回は多い順に安倍派4人(前回2022年は4人)、麻生派4人(同4人)、岸田派3人(同4人、首相含む)、茂木派3人(同3人)、無派閥3人(同2人)、二階派2人(同2人)。残り1人は公明党だ。従来通り、派閥のバランスに留意した布陣と言える。