「PET検査」で“見つかりにくいがん”はご存じですか? 受けた方がいい人の特徴やメリット・デメリットも医師が解説!
がんの診療や検診として実施されている「PET検査」。一体どのような検査なのか、正しく理解していますか? 今回は、PET検査のメリット・デメリット、放射線被ばくのリスクなどについて、検査専門の施設でPET検査を数多く実施している「ゆうあいクリニック」の吉田先生に解説していただきました。 【イラスト解説】がん発症のリスクを上げやすい“食べ物”
PET検査とは?
編集部: まず、PET検査について教えてください。 吉田先生: 「陽電子放射断層撮影(PET:Positron Emission Tomography)」の略称で、病変の形態を画像化するCTやMRIとは異なり、細胞の活動状況を画像化することができる検査です。放射性物質を含み、ブドウ糖に似せたFDGという検査薬剤を使用するFDG-PET検査のことを、一般的にはPET検査と言います。人間ドックなどで、がんの検査として項目に含まれていたり、オプション項目として選択できたりするので、受けたことがある人も多いと思います。 編集部: なぜ、ブドウ糖に似せたFDGを使用するのですか? 吉田先生: がん細胞は通常の細胞と比べて、たくさんのブドウ糖を取り込むという性質があるため、がん細胞があればFDGはそこに多く集まります。つまり、画像検査でFDGの集まりを確認することで、がん細胞の有無などを調べることができるのです。なお、検査ではFDGを体内に注射してから、細胞に行き渡らせるため1時間ほど安静にした後で、ほぼ全身を撮影します。 編集部: PET検査では、がんかどうかわかるということですか? 吉田先生: はい。がんの有無のほか、がんの位置や大きさ、広がり、ほかの臓器への転移、再発の有無などを調べることもできます。
PET検査のメリットとデメリット
編集部: PET検査には、どのようなメリットがありますか? 吉田先生: 最大のメリットは、一度の検査でほぼ全身を撮影できる点です。CT検査やMRI検査は特定の部位を指定して撮影する一方、PET検査は1回で全身を撮影できます。そのため、予期しないところにがんが転移していたり、再発していたりしても、早期に発見することができるのです。 編集部: ほかにもメリットはありますか? 吉田先生: FDGを投与する際の注射の痛みはありますが、装置に15分ほど寝ているだけなので体への負担が少ないということもメリットとして挙げられます。また、FDGはアレルギーなどの副作用が少なく、安全性が高いこともわかっています。 編集部: 反対に、デメリットはありますか? 吉田先生: がんの種類によっては、PET検査と相性が悪いものもあります。例えば、脳、肝臓、腎臓や膀胱などの臓器は、生理的にブドウ糖が集まりやすいため、これらの臓器にできるがんの正確な診断が困難なこともあります。また、細胞密度の低いがんや、悪性度の低いがんも診断が難しいこともあります。加えて、糖尿病などで高血糖の場合、正しい結果が得られないこともあります。そのため、がん検診にはPET検査だけでなく、超音波検査やMRI検査などの検査を組み合わせて受診することをおすすめします。 編集部: PET検査が見つけやすいがんはなんですか? 吉田先生: 「頭頸部がん」「悪性リンパ腫」「悪性黒色腫(皮膚がんの一種)」「肺がん」「乳がん」「大腸がん」「膵臓がん」の診断に有用とされています。 編集部: PET検査で様々ながんを見つけることができるのですね。 吉田先生: はい。それから、乳房に特化した「乳房専用PET検査」というものもあります。基本的な原理は全身のPET検査と同じですが、乳房専用PET検査は乳房だけに範囲を絞り、FDGの集まりを画像化します。そのため、全身PETやマンモグラフィ検査、乳房超音波検査などではわからない小さな病変も、乳房専用PET検査で検出することができます。 編集部: なるほど。 吉田先生: 乳房専用PET検査は、マンモグラフィ検査のように乳房を圧迫する必要がないため、負担が少ないという特徴があります。また、乳腺が多い高濃度乳房はマンモグラフィ検査で正しく診断をするのが困難ですが、乳房専用PET検査であれば影響を受けることがありません。乳房専用PET装置を導入している医療機関は少ないのですが、有用な検査であると思います。 編集部: PET検査は放射線を使用するのですか? 吉田先生: たしかに使用していますが、PET検査1回あたりの被ばく量はごくわずかです。普段生活しているだけでも人間は大地や宇宙などから放射線を浴びていますが、PET検査1回で被ばくする量と、年間で自然に被ばくする量はそれほど変わりません。また、PET検査の放射線は時間が経つにつれて弱くなっていく性質があるため、FDGの場合は約2時間で半分ほどの量となります。FDGそのものもほとんどが尿と一緒に体外へ排出されます。 編集部: それほど心配する必要はないのですね。 吉田先生: そうですね。PETとCTを同時におこなうPET/CT検査の場合には、CT検査の分も被ばくする量が増えることになりますが、健康被害の心配はない程度ですし、被ばくで傷害された細胞は自然と修復されていきます。そのため、特に心配はないとされています。