財政検証で判明、年金「100年安心」ではなかった!公約を実現するには今後も調整が必要だ
上で「少なくとも」と書いたのは、スライドを適用される世代が後にずれれば、受給者総数が増えるからだ。したがって、受給者一人あたりの所要削減率は、0.9%より高くなる(あるいは、実施年数が多くなる)。 ■保険料収入は不足 次に、保険料について見てみよう。ここでは、2005年と2020年の比較を、厚生年金の厚生年金勘定について行うことにする(厚生年金の厚生年金勘定とは、厚生年金のうち、共済組合などを除く部分。なお、旧厚生年金と共済年金は、2015年に統合された)。
厚生労働省の「平成16年財政再計算結果」によると、2004年度財政再計算での標準的なケースでは、賃金上昇率は2.1%と想定されたので、保険料率一定でも、保険料収入は、2005年から2020年の15年間で、約3割増加するはずだった。 そして、保険料率は2005年の14.3%から2020年の18.3%まで28.0%引き上げられた。だから、保険料算定の基礎となる年収が3割増加すれば、保険料収入は、30+28=58%増加するはずだった。
2004年度財政再計算では、厚生年金の厚生年金勘定の保険料収入は、2005年度の20.8兆円から2020年度の34.8兆円まで、67.3%増加すると見積もられた。 実績はどうだったか? ここでは、厚生年金の厚生年金勘定だけを見ることにすると、2005年度の20.1兆円から2020年度の32.1兆円まで、59.7%しか増えなかった(厚生労働省、「公的年金各制度の財政収支状況」)。 保険料率は予定通りに引き上げられたので、見積りとの差は、賃金上昇率についての見通しが過大であったことによるものと考えられる。
したがって、2004年度財政再計算で見積もられていた保険料収入を得るには、保険料率を少なくとも1.673/1.6=1.046倍にしなければならない。つまり、約5%の引き上げが必要になる。したがって、保険料率は、18.3%で終わりでなく、少なくとも19.2%にする必要がある。 ここで「少なくとも」と書いたのは、年金額の場合と同じ理由による。保険料引き上げを適用する世代が後にずれると、保険料支払者が減少するので、保険料率をさらに高める必要があるからだ。厚生年金保険料率は、2割を超えることになるだろう。