県立浦和 MF森悠真#2「『あるものを捨てた代償としてあるものを得る』という考え方は好きではない」【文蹴両道】
偏差値70以上の俊才が通う埼玉県立浦和高校は、古くから文武両道を校訓に掲げる進学校だ。ラグビー部は2013、19年度など全国高校大会に3度出場。サッカー部は全国高校選手権で3度の優勝を数える。 サッカー部のキャプテンで医学部進学を目指す森悠真(2年)に、勉強法と部活動での今シーズンの目標を尋ねた。 ――キャプテンとしてチームをまとめる難しさを感じていますか? それはもう、当たり前のように痛感しています。例えば自分が指示を出して、聞いてくれる人もいれば、全然耳を傾けない人もいます。ベクトルがばらばらだと、チームとして成り立たないので、そのあたりをすり合わせるのに苦労します。 ――チームを束ねるのも大変な作業でしょうが、文武両道の実践も容易ではないでしょうね? そうですね、簡単なことではありません。部活動に割いている時間帯というのは、当然勉強できないじゃないですか。土曜と日曜には遠征もあるので、その時に勉強に費やせるすき間時間の使い方や帰宅してからの休息時間や睡眠時間の確保は、勉強とサッカーを両立させる上では、とても難しい問題ですね。 ――医学部に進むため、勉強に打ち込む時間をさらに増やすため、部活動を辞めようと思ったことはありますか? 1度もないし、これからも絶対にあり得ません。何かひとつのことから逃げてしまったら、その先もずっと逃げ続けるような気がします。あるものを捨てた代償としてあるものを得る、という考え方は好きではありません。自分は負けず嫌いな性格でもあるので、何事もやり切りたいと考えています。 ――浦和高校サッカー部は偉大な先人が大勢います。伝統校の一員としての責任感は強いですか? 100年も続く古豪ですからね、強く感じます。それはプライドでもあるし、プレッシャーに感じることも少なからずありますが、伝統校のキャプテンを務めさせてもらっていますから、100パーセント全力でやり切らないといけないという自覚を持って取り組んでいます。 ――全国高校選手権予選だと、最後のベスト8が2001年で、ベスト4となると準優勝した1985年までさかのぼります。そろそろ結果を出したいですね。 当然、そういう責任感と義務感を背負いながらやっています。通常練習に加えウエートトレーニングなどもこなしていかないと勝てないので、そういう地道なところからやっていって勝てるチームに絶対したいです。今年の選手権予選では、先輩が達成できなかったベスト8に入れるよう頑張りたいと思います。 ――本格的なチーム強化はこれからでしょうが、まずどのあたりをレベルアップしたいですか? 今年のチームのストロングポイントにしているハイプレスは、少しずつですが形になってきました。当面は日々のトレーニングで、足元の技術を向上させたいですね。 ――今は、勉強と部活動の比率というのはどのくらいですか? テストなど学校行事の有無によって違いますが、だいたい半々くらいですかね。 ――1日の勉強時間はどのくらいですか? 学校での自学と通学電車の中を合わせて約4時間です。 ――サッカー部OBには、日本代表のチームドクターを経験した大先輩もいます。 サッカー部の出身ではありませんが、去年の夏休みに浦高の卒業生を訪問し、病院を見学させてもらいました。人のためになる仕事だとあらためて感じ、医師になりたい気持ちがさらに高まりました。 ――部活動と勉強を両立できるモチベーションやバックグラウンドはどこにあるのでしょう? サッカーをやっていて得られるものと、一生懸命勉強して身に付くものって、つながっていると思うんです。必死にサッカーに打ち込んでいるから勉強できないわけじゃなくて、サッカーを続けているからこそ負けないたくましさや強さとかが蓄えられ、それが勉強にも生きてくると思っています。だから両立することの意義は大きいと信じ続けてやり抜く覚悟です。 (文・写真=河野正)