指定難病「ALS」の進行抑制を確認、iPS細胞が切り拓く“新たな治療”の可能性 京都大学
ALS(筋萎縮性側索硬化症)とは?
編集部: 今回の研究テーマになったALSについて教えてください。 中路先生: ALSは指定難病に位置付けられている病気で、手足やのど、舌や呼吸に必要な筋肉の力が徐々に失われます。筋肉そのものではなく、筋肉を動かす神経、運動ニューロンが主に障害を受けます。 一般的に、筋肉を動かす指令が伝わらなくなることで筋肉は弱っていきますが、視力や聴力などの体の感覚、内臓機能などは影響が出ないとされています。 2020年度の特定医療費(指定難病)受給者証所持者数によると、1万514人がALSにかかっていることが判明しています。男性患者がやや多く、女性と比べて1.3~1.5倍です。60~70代が最もかかりやすい一方で、稀ですが若い世代でも発症することがあります。 はっきりとした原因は解明されておらず、神経の老化との関連や興奮性アミノ酸の代謝異常、酸化ストレス、タンパク質の分解障害、ミトコンドリアの機能異常などの学説があります。 ALS全体の約10%は家族内で発症することが分かっており、家族性ALSと呼ばれます。
研究グループが発表した内容への受け止めは?
編集部: 京都大学iPS細胞研究所らの研究グループによる発表への受け止めを教えてください。 中路先生: 本研究の特記すべき点は、実臨床で用いられている既存の薬剤の難病への効果を新技術を用いて証明したことです。 ただし、研究の限界として、症例数が20数例と少ないことに加え、対象が発症後2年以内でALSの重症度基準で重症度1または2の軽症の患者さんに限られており、発症から比較的時間が経過した中等症~重症の患者さんへの効果は不明です。 また、観察期間が24週と短く、長期効果に関してもわかりません。今後、第3相試験での良い結果の報告を期待します。
編集部まとめ
京都大学iPS細胞研究所らの研究グループは、「iPS細胞を活用して発見したALSの治療薬の候補を患者に投与する第2段階の臨床試験で、半数以上の患者で進行の抑制が確認された」と発表しました。 今後も臨床試験が順調に進み、ALS患者へ新たな治療薬が届くことに期待が集まっています。
【この記事の監修医師】 中路 幸之助 先生(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター) 1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
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