推薦とれず…体格劣っても“名門校主将”になれたワケ 指導者の予想を覆す「逆算戦略」
小学3年生の運動会で両親から教訓…継続とセルフケアの大切さ実感
継続を大切にしたのは、調子の波を軽減する狙いがある。思い通りの打撃ができない時、技術的な課題の他に、コンディション(体調)かテンション(気持ち・気分)に要因があると小林さんは考えていた。その際、同じ練習を続けていると、体と心のどちらに原因があるのか判別しやすくなるという。 小林さんはチームの中で不可欠な選手になるために自分を分析し、目標達成までを逆算して毎日を過ごした。その結果、中京大中京ではスポーツ推薦の選手との競争にも勝ち、2年生の秋から主将を務めてクリーンアップに座った。 「高い目標を見据えながら、どうすれば周りに勝てるのかを考えていました。目標から逆算した戦略と、そこに向けたコミット力は自分の武器だと思います」 セルフマネジメントやセルフプロデュースに長けた小林さんは、コンディションを維持するセルフケアにも注意を払っていた。小学生から学校は皆勤で、野球でもチームの全体練習を体調不良や怪我で欠席したことがなかったという。 体調管理の重要性を知ったのは、小学校3年生の時だった。運動会当日、小林さんは体調が優れなかった。「初めて学校を休んだ方がよいかもしれないと思いました」。小林さんの気持ちを感じ取ったように、両親から言葉をかけられた。 「大好きなかけっこ、負けたことがないかけっこで、体調が悪いとベストパフォーマンスを出せないことを経験した方がよいよと、遠回しに運動会に行きなさいと言われました。得意な領域でもコンディションが良くなければ負けてしまうと、わからせたかったのだと思います」 結果的に徒競走で負けなかった。だが、小林さんは両親からのメッセージを理解した。「運動会以降は体調にすごく気を付けるようになりました。少し体に異変がある時は全体練習には参加して、自主練習の時間は無理しないようにしました。調整するのが上手くなりましたね」と語る。 小林さんは現役引退後、人気ベンチャー企業「Speee」で法人営業の経験を積み、今年10月からは東邦ガスで一緒にプレーした大阪桐蔭の元主将・水本弦さんが立ち上げた「Ring Match」に執行役員として加わった。「野球で養った基礎体力とコミット力は社会人になっても自分の武器になっています」。名門校でレギュラーをつかんだセルフマネジメント力は、ビジネスの世界でも強みとなっている。 〇小林満平(こばやし・まんぺい)1996年、名古屋市生まれ。小学4年生で野球を始め、三好東郷ボーイズに所属した中学3年時に世界大会優勝。中京大中京で2年秋から主将を務め、3年夏は愛知大会に「3番・三塁」で出場しベスト4。法大では2年春と4年秋に外野手でベストナイン。大学日本代表にも選出された。東邦ガスで4年連続都市対抗野球大会に出場し、2022年に現役引退。ITコンサルティングマーケティング会社「Speee」を経て、現在は野球関連事業を展開する「Ring Match」で執行役員。
間淳 / Jun Aida