米国のスパイ法、日本も人ごとではないのに議論されるのは米国民の人権のみ 年末の期限切れ控え政権と議会が攻防【ワシントン報告⑨インテリジェンス】
NSAが集めた膨大な情報の中には、偶然引っかかってきた米国人の情報が含まれる。例えば調査対象になった外国人2人の電子メールを調べてみたら、米国人について言及していたということもあるだろう。FBIが米国人の情報を不適切に利用していたことが表面化している。米政府の秘密活動を暴いたスノーデン元CIA職員の告発も記憶に新しい。 6月に開かれた上院司法委員会の公聴会。呼び出された各情報機関の高官が「国家安保において702条の延長ほど重要なことはない」(オルセン司法次官補)と口をそろえる中、与野党議員から「延長した方がいいのは分かるが、人権を保護するための措置が必要」(共和党のグラム委員)と異口同音に苦言が続いた。彼らが気にかけるのは米国人の人権であり、知らぬ間に情報を取られる外国人のプライバシーに配慮した発言はほぼ聞かれなかった。 ▽人ごとでない日本 日本も人ごとでない。昨年策定した安保3文書のうち国家安保戦略は「外交・軍事・経済にまたがり幅広く、正確かつ多角的に分析する能力を強化するため、人的情報、公開情報、電波情報、画像情報等、多様な情報源に関する情報収集能力を大幅に強化する」と明記した。早晩、情報収集と人権との関わりが問題になってくる局面が来るだろう。
ワシントン・ポスト紙は8月、中国軍が2020年に日本の防衛ネットワークに不正侵入していたと報じた。702条に基づき判明した内容かもしれない。ナカソネ局長らが急きょ訪日して対策を促したが、いまだに防御は不十分なのだという。 日本に詳しい元米政府高官は取材に「日本の遅い対応にいら立ってワシントン・ポストに書かせたのではないか」と苦笑した。