箱根駅伝Stories/中央学大・近田陽路 絶対的エースをお手本に 「自分のやってきたことを信じている」
「今までは頼ってばかりいた」
そうした積み重ねが、5000mで4月に14分05秒70、7月に14分00秒97の自己ベストにつながる。「13分台を出したかったので悔しいですが、今までの自分と比べるとかなり強化できたと思います」と手応えを感じていた。 ただ、チームは全日本大学駅伝関東地区選考会で総合11位と結果を残せなかった。夏合宿に入ると、選手たちがどこかまとまりを欠いていた。普段ならそこで主将の吉田が引き締めるところだったが、吉田は実業団の合宿で不在だった。 川崎監督から「お前がチームをまとめないとダメなんだぞ。来年は(吉田)礼志がいないんだから、お前がやらないと」と諭され、近田は「今までは礼志さんに頼ってばかりいた」ことに気づいたという。 近田から見て吉田は、練習で妥協せず、走力も学生長距離界でトップクラスというだけでなく、本当の意味でのキャプテンだった。 「礼志さんは、人に厳しいことを言える人です。後輩やチームメイトにきつく言うと、どうしても嫌われるかもしれないと考えてしまう。でも、そういうことを気にしていると、チームとしても個人としても良くなりません。礼志さんの、悪いことは悪いと指摘して、その人を正すというか、チームを良い方向に持っていける部分を見習っていきたいと思っています」 近田なりにそういう姿勢を見せ、練習も妥協なく取り組むようになると、チームも次第にまとまりが出てきた。吉田は夏合宿後半にチームに合流した際、「みんなの雰囲気がすごく良くなっていて、うれしかった」と語っている。 10月の箱根駅伝予選会では、5位通過という結果に喜べなかったのは、本気でトップ通過を狙っていたから。それだけチーム状態は良かった。近田も日本人トップの10位で走った吉田に次ぐ、チーム2番手(18位)で走り切り、しっかりと役割を果たした。 その後、11月に10000mで29分05秒59の自己ベストをマークしたのち、上尾ハーフは「疲れが溜まっていたのもあるかもしれません」とやや精彩を欠いた。しかし、本戦に向けては、「自分のやってきたことを信じているので、このまま行けば区間賞は取れると思っています」と不安は少しもない。 自身の武器を「粘り強さ」だと言い切る。「普通はきつくなるとタイムを落としてしまいますが、自分は1km3分ちょっとに抑えられるので、大きなミスをあまりしないのが強み。箱根で自分が一番活躍できるのは9区だと思っています」 チームの目標は総合5位。強豪校がひしめくなか、非常にハイレベルな目標だが、「かなり楽しみです。本当にやってやるぞという気持ちが強いです」とを心待ちにしている。 こんだ・ひろ/2003年12月3日生まれ。愛知県豊橋市出身。愛知・羽田中→愛知・豊川高。5000m14分00秒97、10000m29分05秒59、ハーフ1時間2分08秒
小野哲史/月刊陸上競技