20年後の大学生は今より3割少なくなる…では、どうしたらいいのか?
大都市では超高層キャンパスにする手も
共同キャンパスは、同じエリア内の大学によって構成する。学生は、入学した大学にかかわらず共同キャンパスに通学するのだ。共同キャンパスの敷地面積にもよるが、例えば1~2年生が共同キャンパス、3~4年生はそれぞれの大学の既存キャンパスに通学するといった形もあり得るだろう。 共同キャンパスでの授業はそれぞれの大学ごとに行うものもあれば、共通授業として行うものがあってもよい。各大学のクラブやサークルの拠点を共同キャンパス内に置けば、1~2年生と3~4年生の交流も図れる。他大学との交流戦や文化コンクールなどの連携も実現しやすくなる。 コロナ禍でオンライン授業が急速に普及したが、遠方の大学に進学した人もこのキャンパスを拠点として授業が受けられるようにすればよい。名古屋市出身で東北の大学に合格した人が、自宅から名古屋市内の共同キャンパスに通って自分の属する東北の大学の授業を受け、サークル活動は名古屋の共同キャンパスにある他大学に所属して行うという使い方だ(遠距離の大学同士のインカレである)。仮に共同キャンパスの利用料を負担したとしても、下宿費用を負担しなくて済むことを考えれば割安であろう。 このように、共同キャンパスを自由な発想で活用したならば、学生たちは入学した大学にとらわれることなく友人ができる。大学を超えた教員の共同研究拠点ともなる。大学経営を考えても、受験生の人気が高まり募集がしやすくなるだろう。学食や書店なども各大学が共同で施設運営や事務システムの一元化を図ればコスト削減ともなるし、大学間の連携や提携もしやすくなる。 共同キャンパスの立地については、政令指定都市や県庁所在地に建設することを想定している。中心市街地の賑わいづくりにも大きく貢献し得るので、各自治体の再開発事業と連携して、なるべく交通の要衝である繁華街周辺に建設することだ。 キャンパスといっても、必ずしも広大な土地を必要とするわけではない。超高層ビルに入居する方式でも十分である。具体的に説明するなら、東京の新宿駅から徒歩5分の距離に、地上28階、地下6階建てという超高層キャンパスを持つ、工学院大学のようなスタイルである。 中心市街地に共同キャンパスができれば、地域の企業や店舗にとってはアルバイトを確保しやすくなるし、学生にとってもアルバイトと授業の両立がしやすくなるメリットがある。美術館など文化施設にもアクセスしやすくなる。オフィス街とも近いので、企業との交流が図れれば、スタートアップ企業をつくる学生が出てくるかもしれない。 学生は新しい消費スタイルの火付け役なので、20歳前後の人が絶えず集まる一大拠点の誕生は企業にとってもビッグチャンスとなるだろう。学生たちの消費を当て込んで、学生向けの商品を扱う店舗が周辺に続々と誕生すれば、地域経済の活性化策ともなろう。 学生は"日本の未来"である。彼らと一体となって街づくりを考えていくことが、老いゆく人口減少日本には極めて重要である。 つづく「日本人はこのまま絶滅するのか…2030年に地方から百貨店や銀行が消える「衝撃の未来」」では、多くの人がまだまだ知らない「人口減少」がもたらす大きな影響を掘り下げる。
河合 雅司(作家・ジャーナリスト)