20年後の大学生は今より3割少なくなる…では、どうしたらいいのか?
人口減少日本で何が起こるのか――。意外なことに、多くの人がこの問題について、本当の意味で理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。 【写真】日本人は「絶滅」するのか…2030年に百貨店や銀行が消える「未来」 100万部突破の『未来の年表』シリーズの『未来のドリル』は、コロナ禍が加速させた日本の少子化の実態をありありと描き出している。この国の「社会の老化」はこんなにも進んでいた……。 ※本記事は『未来のドリル』から抜粋・編集したものです。また、本書は2021年に上梓された本であり、示されているデータは当時のものです。
20年後の大学生は今より3割少なくなる
第4の切り札は、ユースシティのコンパクト版ともいうべきアイデアだ。大学の共同キャンパス化である。大学が密集する東京・御茶ノ水のような「学生街」を、全国各地に創出しようというのである。 若さ溢れる学生たちが社会に与える影響には大きなものがある。しかしながら、総務省の人口推計(2019年10月1日現在)によれば、0歳人口は89万4000人で、20歳(125万5000人)の71・2%だ。大雑把に見積もって、20年後の大学生は現在より3割少ない水準にまで落ち込むということである。 ハイスピードで少なくなっていく学生たちがバラバラに分かれて学んでいたのでは、"学生らしい若さ"が世の中を動かす力は、人数の減少以上に弱くなっていく。 こうした状況を阻止するには、地域ごとに大学が共同キャンパスを作り、学生たちが恒常的に集まれる機会を提供することだ。それは枯れゆく日本におけるパワースポットとなり、「社会の老化」が進む中での、瑞々しいオアシスという場所となろう。 政府は、都市の無計画な膨張を回避するため1950年代から1960年代に工業等制限法を制定し、首都圏と近畿圏の大学や工場の新増設に一定の制限をかけてきた。 これを受けて対象となった地区以外でも大学の郊外移転の流れが強まった。人里離れた緑地の中に、巨大なキャンパスを構える大学が増えたのである。同じ都道府県内にあってもそれぞれの大学は遠く離れてしまい、郊外であるがゆえに交通機関も不十分で他校との交流は簡単でなくなった。 今後は地域人口の減少でますます交通機関が不便になることが予想される。このような環境下で学生数まで減っていったのでは、学生のマインドも盛り上がらなくなるだろう。 2002年の同法廃止を受けて、一部では大学の都市部への回帰の動きもみられるが、各大学が地域の中で一体感をもって連携するという動きは乏しく、大学の影響力を十二分に引き出せないでいる地方が少なくない。「社会の老化」を解消し得る武器を活かし切れていないということだ。 東京や京都など多くの大学が市街地に集まっているところもあるが、それでも先述した通り少子化で学生の絶対数が減っていくことを考えれば、早くから手を打っておいたほうがよいだろう。 そもそも、多くの学生を郊外に追いやり、中心市街地と分断してしまった当時の政府の決定は、その時代の要請であったとはいえ、結果として日本が衰退する遠因となった。「田舎の学問より京の昼寝」という諺もある。好奇心に溢れ、実社会からさまざまなことを吸収する20歳前後の人たちは、さまざまな世代の人が集まる場所にいてこそ、学べることが多い。伸びやかな発想や多彩な感性も、「違い」を知り、学ぶところからはぐくまれる。 多感な年齢の学生たちを区切られたキャンパス内に押し込めるようにして実社会から分断したら、内輪思考の人が増えることとなる。学生たちがもっと個々の持つ可能性を磨き合い、街の中に出やすくしていかなければ「社会の老化」に拍車がかかる。