ANNA SUIが羊羹に!京都の老舗和菓子店「鶴屋吉信」との異色コラボが実現した理由とは
ANNA SUI(アナスイ)といえば、ロマンチックでフェミニンなモチーフを用いつつも、ロックを感じさせる独創的なデザインで人気のファッションブランド。2024年10月、そんなANNA SUIから意外なコラボ商品が発売されたと話題を呼んでいる。 【写真】オンラインでは限定ポーチもついてくる!クラシカルでモダンなデザインが魅力 それが、スクエア缶に入った羊羹!紫とゴールドを基調とした缶を開くと、3本のミニ羊羹が入っている。ANNA SUIとコラボをしたのは、1803年(享和3年)に創業し、全国の百貨店にも多数出店をしている京都の有名老舗和菓子店の「京菓匠 鶴屋吉信」だ。缶にはANNA SUIのロゴと共に、鶴屋吉信のアイコンである鶴丸があしらわれている。 老舗和菓子店とファッションブランドという異色のコラボはどのようにして実現したのだろうか?株式会社鶴屋吉信 営業企画室の堀さくらさんに話を聞いた。 ■互いの世界観を融合させたデザイン。第1弾は3日で完売! 実は、ANNA SUIとのコラボは2回目。2023年10月に第1弾のコラボが実施されている。 「弊社の定番菓子として『鶴屋吉信ようかん』という食べきりサイズの羊羹を出しているのですが、ANNA SUIとのコラボで缶入り3本セットで販売してみませんか、と以前よりお付き合いのある企画会社よりお声がけいただいたのがコラボのきっかけです」 独特の世界観を持つANNA SUIと、鶴屋吉信の和菓子をどう融合させるのか。細部にわたって調整が行われたという。 「第1弾は、弊社から提案いたしましたデザインをブラッシュアップしていただきました。ANNA SUIのモチーフをベースにおき、弊社の鶴丸ロゴを入れてアレンジして洋と和が融合したデザインになるようにこだわって制作しました。羊羹は定番の『小倉』、『抹茶』に加えて、シロップ漬けにしたレモンピールを入れた限定フレーバーの『檸檬』の3本で販売いたしました」 缶のデザイン、羊羹それぞれのパッケージデザイン、羊羹の味と細部にわたって各社で検討を重ね、商品が完成するまで約1年かかったそう。そのかいあって、第1弾は発売開始3日間で完売した。 「予想外のことで、ここまで反響があるのかと驚きました。SNSではコラボ企画をきっかけに鶴屋吉信を知ってくださったという投稿も目にし、非常にうれしく思いました」 第1弾の反響を受け、第2弾の企画もスタート。1年をかけてじっくりと企画を温めていったそう。 「どういった商品にするのか、どういった販促をかけていくのか、SNS戦略はどうするのか、第2弾に向けてじっくりと進めていきました。前回との違いでいうと、大きいのはオリジナルグッズを2種類制作したことです。店舗ではオリジナルショッパー、オンラインではオリジナルポーチがついてきます。このデザインも先方デザイナーと協力しながら制作いたしました。ポーチはマット調ゴールドのがま口にすることで、和の雰囲気を取り入れました」 配送時の梱包方法についても改善したそう。 「羊羹を入れている缶は角が丸く、それに対して羊羹はきっちりとした角なので、第1弾の際、缶と羊羹がぶつかってパッケージの角が少し潰れてしまうということがありました。第2弾では、クッション材を間に入れることでそういったことがないようにしています。また、緩衝材でくるんでいても配送の状況によっては缶にスレが発生してしまったということがありましたので、今回は商品をフィルムで箱に固定する形に変更しました。すべてのお客様に、きれいな状態お手元に届くよう注力しました」 第2弾の羊羹は「小倉」、「抹茶」、「薔薇」の3種類。 「ANNA SUIの象徴的なモチーフであるローズを羊羹で表現しようと、コラボ商品限定のフレーバーを開発しました。ローズ味の羊羹は初の試みです。ローズの上品な香りはありつつも、白あんの優しい甘さが消されないように試作を重ねていきました。上品な味に仕上がっておりますので、ご賞味いただきたいです」とのこと。数量限定のコラボ商品なので、売り切れる前にぜひゲットしてほしい。 ■「和菓子のイメージを打破したい」老舗和菓子店の挑戦 歴史ある老舗和菓子店がファッションブランドとのコラボをするというのは思い切った決断のように感じるが、社内で反対意見などはなかったのだろうか? 「異業種とのコラボを行うのはこれが初めてではありません。ゲームキャラクターの『星のカービィ』とのコラボした『カービィのまんまる手づくり最中』という商品を通年で販売しています。また、過去にはチョコレートブランドのGODIVA(ゴディバ)とのコラボを行い、鶴屋吉信を代表する銘菓『京観世(きょうかんぜ)』にチョコレートを使用したものを販売しました」 星のカービィとのコラボ商品「カービィのまんまる手づくり最中」はカービィの顔を模した最中種(もなかだね、最中の皮)に、自分で缶入りのあんを挟む商品。食べるときにあんを挟めるので、最中種のパリッとした食感と好きな量のあんの組み合わせを楽しめる。今年11月にリニューアルを行い、ピンクの最中種と抹茶あんが加わったところだ。 「パッケージにもこだわり、おかげさまでオンラインショップでは販売開始から2日で最初の予定数を完売しました。追加入荷もありますので、ぜひチェックしてみていただきたいです。こうしたコラボの経験が、今回のコラボにおいても活きてきたと感じています」 そもそも、和菓子とのイメージと離れたブランドと積極的にコラボを行っているのはなぜだろうか? 「これは弊社に限らず、和菓子業界全体が抱えている悩みだと思いますが、若い世代の方にとって、和菓子は格式高い、食べ方がわからないという方が少なくないと感じています。今後も京菓子の文化や和菓子のおいしさを残していくにはどうしていけばいいのか。伝統の技を守りつつも、新しい挑戦を重ねていくことで、先ほど申し上げたような堅いイメージを打破するような商品を企画開発したい、その想いからコラボのお話をお引き受けしています。なので、今後も和菓子の新しい切り口を得られるような企画は進めていきたいと考えています」 和菓子の新しい可能性を切り開くため、鶴屋吉信ではコラボだけではなく、新しいスタイルのオリジナル商品の展開にも力を入れているという。 「2015年に京都駅八条口に『IRODORI』という新感覚の和菓子ブランドショップをオープンさせました。和菓子を身近に感じていただけるように、パステルのような琥珀糖や、マカロンのような一口サイズの最中、スクエア型の羊羹など、伝統的な技を用いつつも、新しいモダンなスタイルの和菓子を展開しています」 IRODORIは今年5月にリニューアル。商品ラインナップを拡充し、直営カフェの人気メニュー「生つばら」のテイクアウトとイートインができるようにしたそう。 「東京・日本橋にある直営店『TOKYO MISE』では今まで本店のみで展開していた生菓子実演コーナーを設けておりまして、お寿司をカウンターで握ってもらうように、和菓子職人が目の前で四季に合わせた生菓子を作り、抹茶と合わせて楽しんでいただけます。こちらも今年リニューアルしまして、IRODORIの商品を扱うようになりました。また、TOKYO MISE限定で、フルーツ大福や本わらび粉を使用したわらび餅もお出ししております。東京では虎ノ門ヒルズ店もIRODORIの商品を取り扱っています」 ANNA SUIとのコラボ企画ではSNSで「パッケージ目当てで買ったけど、おいしかった!」というような投稿もあったそうで、普段和菓子を食べていない層に確実に和菓子の世界を届けている。伝統的なスタイルの和菓子と、モダンな新感覚和菓子の両輪を用いた鶴屋吉信が次に何を生み出すのか、期待したい。 取材・文=西連寺くらら ※記事内の価格は特に記載がない場合は税込み表示です。商品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格と異なる場合があります。