「野良犬がうろつく廃虚」が徳島一のにぎわいエリアに。倉庫街を変貌させたNPOの原点 構想から10年、県の協力を得て規制緩和
老朽化した倉庫街から業者が撤退し収入が減ることを危ぶんでいた県も規制緩和に前向きになった。担当者は「ブランド化することで継続的に土地を借りていただける。新しいことを始めたい人も集まる。ウィンウィンの形を目指した」と話す。 岡部さんが倉庫街の活用を構想してから10年。倉庫に入居できる仕組みが整った。今では県が倉庫改修に補助金を用意するなど積極的な支援を続けている。 ▽新たな店舗はスイーツの「研究所」 「この街のにぎわいづくりに共感できるか」。これが当初から入居審査の第一条件だった。岡部さんらの活動が実を結び、各店舗のオーナーがマルシェなどのイベントを開くようになった。キッチンカーや手作り雑貨の販売など固定の店舗を持たない店も集まり、通りは人であふれるようになった。 今年2月初め、倉庫に新たな店が加わった。「PRISM LAB(プリズム ラボ)」のシェフパティシエの柴田勇作さん(38)はプレオープン日、「万代地域、徳島に関わる人を増やしたい」と話した。柴田さんは2023年パリで開かれたスイーツの国際大会に日本代表の1人として参加し、優勝している。
東京生まれハワイ育ちの柴田さんは、銀座や日比谷で10年以上キャリアを積んだが、「60歳になって振り返ったときに何か残るだろうか」と不安になった。そんなとき、徳島県那賀町のパンチの効いたユズと出会い、徳島の自然豊かな土地柄に引かれた。東京は働く場所ではないと思い、2022年4月に移住した。 大会に優勝した後、周囲からの注目が高まると思うと焦りを感じた。考え抜いた末、スイーツをより深く探求する「研究所」をつくることを決めた。候補地を探していたところ、万代中央ふ頭の倉庫が空くことを知る。世界大会の会場を再現したキッチンを備える「PRISM LAB」を開設した。 この店を、地域の活性化や徳島のコーヒー文化とコラボする場所にしたいと考えている。申し出があれば、キッチンを大会の練習場所にも使ってもらいたい。「ここは歩くだけで楽しい街。この店で自分たちが楽しそうに、幸せそうにしている姿を見せたい」と笑う。