登場から10年の節目を迎えるApple Watch、ハードとAI・ヘルスケア機能を大幅に強化、「次の10年」への戦略を読み解く
■メディカル領域に踏み込んだ機能を提供 睡眠時無呼吸症候群の診断機能も、推論エンジンを用いて加速度センサーが検知している情報を複合的に判断し、中等症から重症までの睡眠時無呼吸症候群を警告するというものだ。 睡眠時にApple Watchを装着しておくと、診断された際にユーザに警告が出され、ドクターに渡すためのレポートを出力できる。もちろん、実際に病院へ行ってドクターによる診断を受け、治療開始するかどうかは本人次第だ。
アップルによると、日本には睡眠時無呼吸症候群の患者は900万人ほどいると推定されているが、その80%以上が病院での治療を受けていないという。 睡眠時無呼吸症候群は、深刻な事態を招くこともあるうえ、日常生活の質も大きく下げることが知られている。筆者が診断を受けて、寛解するまでの間治療器を使って睡眠していたことが数年間あった。Apple Watchをきっかけに病院に足を運ぶ人が増えれば、社会全体としての健康の質は向上するに違いない。
特筆すべきは今回、厚生労働省の認可を受け、正式に診断を下す機能としてアナウンスされることが決まったことだ。まだ北米でも提供されていないが、年末までにFDA(食品医薬品局)の認可を受けて提供が開始予定で、それから時を置かずに日本でも提供される見込みだ。 すでに心電図の計測や、血中酸素濃度センサーの搭載、心房細動の検出など、ヘルスケアとメディカルの領域をつなぐための機能がApple Watchにはいくつも搭載されているが、日本での導入は年単位で遅れるのが通例だった。
それが今回、タイムラグなしで日本でも利用可能になったのは喜ばしいことだ。 日本を含む各国の保健当局とのコミュニケーション窓口が、これまでの経緯からクリアになったこともあるのだろうが、アップルが先導して、こうした認可を取り付けることによって、ライバル企業も類似する機能を搭載しやすくなる。 ■Apple Watchの次の10年 ビジネスの観点で、Apple Watchはアップルにとって極めて重要な製品であるのは冒頭でも述べた通りで、Apple Watchが生活の質を高めるために欠かせない道具になっていくほど、消費者はiPhoneから離れられなくなっていく。