登場から10年の節目を迎えるApple Watch、ハードとAI・ヘルスケア機能を大幅に強化、「次の10年」への戦略を読み解く
その工程は全40段階に及ぶが、価格はリーズナブルに抑えられている。 ■本格的なAI技術の導入に向けて この大幅刷新のタイミングで、将来を見据えた設計がいくつかある。 1つはディスプレイの拡大だ。ディスプレイの縦横比は、若干横方向が伸ばされたうえで、サイズも拡大された。 この違いは意外にも体感的に異なるもので、特にタッチ操作を伴うような操作では違いを大きく感じるはずだ。あるいは、ディスプレイサイズの拡大に伴い、従来よりも小さいサイズのApple Watchを選ぼうというトレンドも生まれるかもしれない。
ディスプレイの改良には、斜め方向から見たときの視野角が広がっているなど細かな点もあるが、Apple Watch Ultraの導入に伴って画面サイズの縦横比が自由になったことに伴い、Ultraではない通常のApple Watchもディスプレイの形状を見直したと考えるべきだろう。 つまり、アップルは、ここ数年にさかのぼった時点から、Apple Watchのソフトウェア開発環境を次の世代に移すべく準備を進めてきていたのだと思う。
例えば、今年の製品に採用されているシステムインパッケージ(SiP)のS10には、4コアのNeural Engine、すなわち推論エンジンが搭載されている。コア数だけで判断するのは危険だが、4コア化されたのは昨年のS9からで、ここでダブルタップという新しい操作性が加わった。 ほかにも推論エンジンが活躍するApple Watchの機能は決して少なくない。将来的にはApple Intelligenceの搭載も見据えているはずだ。
しかし、それまでの経過において、いくつかの機能追加が行われるだろう。今年導入されたのが睡眠時無呼吸症候群の診断機能。腕時計には日々の活動の状況や、細かな人体の動きなど、雑多な情報が集まってくる。センサーが増えたり、性能が上がれば、その情報はより膨大なものになっていく。 そして、AI技術が最も得意としているのが、そうした雑多な情報を集約し、そこに文脈を見つけていく推論や、正しい結果を学習する処理だ。スマートウォッチとAIは、本質的に相性がいい。