【特集】『運転手不足』と『2024年問題』で相次ぐ路線バスの廃止「1日15時間勤務」元運転手語る過酷な労働実態…“地域の足”が迫られる選択の時
さらに、京阪バスも大阪・守口市や京都・京田辺市などを走る計16路線を、2024年春までに廃止すると発表しました。ここでも廃止の理由として挙がったのは、「運転手不足」でした。
1日15時間勤務…バス運転手の過酷な労働体制とは
日本バス協会や国土交通省によると、2017年には13万人以上いたバスの運転手も年々減少し、2030年には9万3000人ほどになると予測されています。また、バス会社の94%が赤字経営となっていて、バス運転手の年間所得額は399万円と、全産業平均の497万円に比べて100万円近く低くなっています。
4年前まで、関西で路線バスの運転手をしていた男性は、厳しい勤務状況を口にします。 (路線バスの元運転手) 「勤務は、長くて15時間。休日出勤ばかりで、6~7連勤して1日休み、というサイクルを続けていました」
この男性の場合、毎朝午前4時半に起床し、午前5時半ごろ出社。通勤ラッシュの午前6時から午前10時まで運転し、途中で昼食や休憩を挟みながら、帰宅ラッシュの時間が終わる午後8時ごろまで運転を続けます。仕事を終えて、家に着くのは早くて午後9時ごろ。翌日にはまた、午前4時半に起きて出社します。 しかも、渋滞などで遅れが生じた場合は、休憩時間を削って遅れを取り戻すことになります。運転中はトイレに行くこともままならず、食事や水分補給を控えるなど、過酷な勤務が続くといいます。 男性は7年ほど勤務したものの、結婚を機に転職を決意しました。 (路線バスの元運転手) 「もともとバスが好きなので、憧れで入った職業ですが、いざ結婚するとなったときに、配偶者に家で会えない。家にいる時間がほとんどない。ご飯食べてお風呂入って寝るだけ。そこで、子どもができたときに子育てなんかできたもんじゃない、と気づいてしまって…」
ドライバーの長時間労働は、全国的な問題です。国は、これまで制限のなかったドライバーの時間外労働を、2024年4月から年間960時間までに制限します。その結果、一人当たりの労働時間が制限され、あらゆる業界で「運転手不足」が起きています。これが、“2024年問題”です。 (路線バスの元運転手) 「バス会社は、今までよく持ったなというのが、素直な感想です。単純にドライバーの数を30%ぐらい増やさないと、2024年問題は乗り越えられません。運転士の数が少ない、それを改善するための原資がない。法律から変えるぐらいのことをしない限りは、このまま廃れていく一方だと思います」
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