芥川賞『蛇にピアス』から20年。話題作を発表しつづけ、現在は3つの新人賞で選考員も務める金原ひとみさん。

2004年に当時20歳の若さで、デビュー作『蛇にピアス』で芥川賞を受賞した金原ひとみさん。『蛇にピアス』では刹那的で、退廃的に生きる若者たちを大胆な性描写とともに描き、時代を代表する小説となった。 【全画像をみる】金原ひとみ、20歳の芥川賞から20年「書くのはきつい、でも無くてはならない」 それから約20年、金原さんは精力的に作品を発表し続けている。さらに2020年代に入ってからは、すばる文学賞、文學界新人賞、新潮新人賞の3つの選考委員を務め、名実ともに日本の小説界を牽引し続けている。 40代を迎えた金原ひとみさんは、デビューからの20年をどう振り返り、そしてこれからどんな作品に挑んでいくのか──。 ■インタビュー前編：「芥川賞作家・金原ひとみが問う『君たちはどう生きるか』。自由に生きられない日本人へ」 金原ひとみ…1983年、東京都生まれ。2003年に『蛇にピアス』ですばる文学賞を受賞しデビュー、2004年に芥川賞受賞。2012年『マザーズ』でBunkamuraドゥマゴ文学賞、2020年『アタラクシア』で渡辺淳一文学賞、2021年『アンソーシャルディスタンス』で谷崎純一郎賞など、数々の文学賞を受賞している。変化のない日々を送る40代の女性会社員を主人公にした最新作『ナチュラルボーンチキン』を2024年10月に発売した。

「こんなことは人生で二度と起こらないから」

── 衝撃のデビューから20年以上が経過しました。デビュー作『蛇にピアス』は50万部以上を売り上げましたが、逆に作家のイメージが固定化された面もあると思います。自身のデビューを振り返ると、どんな思いがありますか？ 芥川賞を取って大きい重版ががんがんかかっている時に、編集者から「こんなことは君の人生で絶対にもう二度と起こらないからね」と言われていました。「芥川賞は2度と取れないし、今はお祭り。これから先どんな賞をとっても、こんなに売れることあり得ないから心しておけ」みたいに言われて、そういうのもなんだなと思っていました（笑）。 ただ代表作と呼ばれる作品があって、書く場所をずっと保てているのは良かったなと思います。 新人賞の選考委員もしていますが、書き続けることがいかに難しいことか、新人を見ていて思います。なかなか2作目が書けないとか、芥川賞のことを意識するだろうなとか。 私はデビュー作で芥川賞を受賞したので、何も考えないまま1つハードルを超えてしまった。芥川賞の定義を知らなかったので、そもそも芥川賞の候補になるなんていう可能性も考えてなかったんです。