【毎日書評】たくさんのアイデアを生み出す天才に近づける普遍的な「知的インプット習慣」
天才は「ひらめき」に頼らない。アイデアを生み出す「仕組み」を持っている。
この分母Cこそが、本書のテーマ「インプット・ルーティン」だ。 編集者という職業柄、これまで数多くの才能たちと出会ってきたが、クリエイティヴな人々の多くが、独自のインプットの習慣=ルーティンを持っていた。新しいアイデアを常に生み出すために、分母であるCの部分、すなわち大量のインプットを習慣として仕組み化しているのだ。(24~25ページより) そう確信するからこそ著者は、アーティストや作家、写真家、ライター、グラフィックデザイナーなどさまざまな仕事をする人たちと仕事をするたびに、「どうやって、アイデアを/イメージを思いつきますか?」と尋ねてきたのだそうです。それはいうまでもなく、クリエイティヴのプロとして活躍し続けるための秘訣を知りたいから。 彼らの回答の多くは次のようなものであった。 「アイデアは思いつくものではない。出るものだ」と。 さらには、こう語る者もいた。 「すばらしいアイデアやイメージが急に降りてくる、または爆発的にひらめくということを期待しないほうがいい」と。(25ページより) そうしたことばのなかから著者が学んだのは、トップのクリエイターほど「アイデアやイメージが確実に生まれてくる日常的な仕組み」を持っているということだったそう。 私がこれまで仕事をしてきた「天才」と称されるクリエイターたちは、たとえば音楽家の坂本龍一氏にしろ、写真家の篠山紀信氏にしろ、どんな課題に対しても「ほぼ即答に近いかたち」でアイデアを出すことができるのを私は仕事の現場で目の当たりにしてきた。彼らは日々膨大にインプットし、膨大なアイデアの掛け算を頭の中で試しているからこそ、そんな芸当も可能になるのだ。(26ページより) つまり天才と呼ばれていたとしても、彼らは決して自分の才能を過信しないということ。それどころか、そもそも自分の内部からとめdなくアイデアやイメージが湧き出てくるとは思っていないといいます。 彼らは、ネタのストックの量と、ネタの組み合わせの試行錯誤数が違うから、一般人とは異なって見えるのです。たとえば、「このパターンは、あれと組み合わせるとおもしろくなりそう」「この切り口は、なにかに使えそうだ」「このネタは使いたいけど、いまじゃないかな」というようなことを、つねに考えているわけです。 だからこそ、優れたアウトプットが必要となったときに頼るべきは、偶発的なひらめきではなく、アイデアを生み出し続ける仕組みと、それを支える日常的な基盤。著者はそう述べていますが、充分に納得できる考え方ではないでしょうか。(24ページより) 他にも読書、写真・映画・アート、音楽、食べ方など、さまざまな角度からインプットの方法を明らかにした興味深い内容。その根底に根ざす広い視野は、クリエイターだけでなく、すべてのビジネスパーソンに刺激を与えてくれることでしょう。 >>Kindle unlimited、2万冊以上が楽しめる読み放題を体験! 「毎日書評」をもっと読む>> 「毎日書評」をVoicyで聞く>> Source: ダイヤモンド社
印南敦史