「大手町でアンカーを待ちたい」 2区8位にとどまった國學院大・平林清澄/箱根駅伝
◇第101回箱根駅伝・往路(東京・大手町~神奈川・箱根町/5区間107.5km) 第101回箱根駅伝の往路が行われ、青学大が5時間20分01秒で往路優勝を飾った。 復路出走メンバーをチェック! 6位の國學院大のエース・平林清澄(4年)は2区で1時間6分38秒の区間8位にとどまった。 「今までにないくらい、苦しいレースになりました。悔しい限りです」。今季は走ればニュースになった平林が、最後の最後に悔しさから唇を噛みしめた。 ずっと、箱根で勝ちたかった。出雲駅伝は今年度、全日本大学駅伝では昨年度、それぞれ区間賞を獲得しているが、1年時から出場している箱根だけは、いまだ区間賞はゼロ。チームとしても優勝はない。 並々ならぬ決意で今シーズンをスタートさせ、個人では2月に初マラソンの大阪で日本学生記録を打ち立てた。主将に加えて寮長も務めることになった平林は、1年間チームを鼓舞し続ける。 自分が出走しないレースにも足を運び、チームメイトの応援に声をからす。自分の目で仲間の走りを見ないと「ミーティングで言えないこともある」と、チームのためになることなら努力を惜しまなかった。 強いチーム、速いチームになるのではなく、『勝てるチーム』づくりに邁進してきたことによって、國學院大は出雲駅伝、全日本大学駅伝を制覇。史上6校目となる学生駅伝3冠に向けた足がかりとしては最高の結果となった。 いよいよ迎えた箱根。もちろん平林は3年連続でエースが集う2区を担当する。小細工なしの真っ向勝負。区間エントリー発表の段階で、すでに2区のところに平林の名前があった。 平林が待つ鶴見中継所にタスキを運ぶのは、野中恒亨(2年)。中大の吉居駿恭(3年)が飛び出した以外は、スローペースで固まりになって展開された1区で、野中は落ち着いていた。最後のスパート勝負で粘りを見せ、トップの中大とは1分40秒差ではあったが、2位の駒大とはたった8秒差の6位と、上々の位置で平林にタスキをつないだ。 権太坂以後のアップダウンに備え、落ち着いたスタートを見せる平林。しかし、早速後ろから東京国際大のリチャード・エティーリ(2年)がすさまじい勢いで迫ってきた。 2kmで早々にエティーリに捕まった平林は、「調子が良かったのでついていきました」と食らいつく。その後ペースは少し落ちてエティーリに離されるも、10km過ぎからは平林が集団の先頭に立ち、再度前を伺う走りを見せる。 15kmではついに2位争いを繰り広げる駒大・篠原倖太朗(4年)とエティーリとの差を10秒に縮めることに成功。だが、平林の走りが苦しい。 「権太坂から上げる予定でしたけど、そこからきつくなってしまった感じで上がり切らなかった」 そう振り返る平林は、20km手前から集団から遅れ始める。最後に平林を待っていたのが、2区名物の戸塚の壁。本来であれば、ここを誰よりも速く、強く駆け抜ける予定だったが、その足取りは重い。 しかし、平林の目はただひたすらに前を向く。むしろ力強さすら感じるほどの鬼気迫る表情でひたすらに走り続ける。 意志の強さこそ、心の強さ。それを証明するかのように、懸命に腕を振り、足を前に運び続ける平林。『箱根で勝つ』という、たったひとつの願いのためだ。 結果、8番目で戸塚中継所に辿り着き、3区を走る同級生の山本歩夢にタスキを託した。1時間6分38秒。前回からは記録を12秒落としてしまっただけだったが、一度に3人が区間記録を上回るという史上最高レベルのスピードレースのなかでは、順位では厳しい結果となってしまった。 「後半上がらなかったのは、自分の弱さだと思います。最後の箱根駅伝だったので、自分のなかでも大事にしたいと思っていましたし、次につなげていかないといけなかったですけど、レース展開というところで悔しい、悔いが残るかたちになりました」 前田康弘監督からは「最後、悔いが残らないように、ここで負けたら悔いが残るぞ、悔いが残らないように最後しっかり頑張れ」と声をかけられた。だが、「それができなかったのが悔しい。もっとやれればなと思いますし、チームに本当に申し訳ない結果だったかなと思います」と悔やむ言葉が続く。 ただ、今年度の國學院大は、平林が『勝つ』チームに仕上げてきた過去最高のチームだ。その熱い思いは十分に伝わっている。 平林の後を継いだ3区山本は2つ順位を上げ、4区の青木瑠郁は区間2位の走りでさらに順位をひとつ押し上げて5位でつなぐ。國學院大の不安要素でもあった5区山上りは、高山豪起が順位をひとつ下げてしまうが、それでも総合6位で踏ん張り往路を終えた。往路トップの青学大とは、5分25秒差。國學院大が復路に強力な布陣が残る。 平林は主将として言葉を紡いだ。「キャプテンとしてチームを信じて、レースが終わるまで大手町でアンカーを待ちたいと思います」。
田坂友暁/月刊陸上競技