70センチを超える岩の塊。目を凝らすと大きな骨の一部が…。モササウルス類の巨大な怪物の“歯”か
■サラリーマン化石ハンター・宇都宮聡さん 【写真】今回発見したモササウルスの歯(点線丸囲み部分)。大きいものは断面直径が4センチに迫る
大阪市立自然史博物館の化石処理室で行っている、大型海生爬虫類・モササウルス類のクリーニング(化石周辺の余分な岩を削り取る作業)の進み具合を報告します。普段は会社員として働いており、休みの週末に、岩の塊からモササウルスの骨格を少しずつ削り出しているのです。 大阪の化石ハンター・佐藤政裕さんらが、1990年代初頭に大阪府泉南市の和泉山脈の白亜紀層(約7千万~6600万年前)から発掘した化石です。引き取る際、化石の多さに驚きました。コンテナ7箱に及ぶ、骨化石を含む岩塊の山です。これを1人で処理するかと思うと、正直、気が遠くなりました。 まずは重要な部位から手を付けることにしました。特に気になったのが、長径が70センチを超える大きなノジュール(塊)です。なにせデカいので、佐藤さん宅でも室内には置けず、庭先に転がしてありました。雨に打たれて、表面にはうっすらとこけが生えていました。しかし、目を凝らすと、こけの間から大きな骨の一部が見えています。
博物館に化石を搬入し、まずこのノジュールの洗浄作業を行いました。こけや汚れを洗い流すと、ノジュールの端から、二つの丸い断面が浮かびあがりました。この断面には見覚えがあります。同じ和泉山脈で私が発見した、モササウルス類のあごに生えた歯の断面と同じ模様です。 どうやらこの大きなノジュールの中には、上あごなど頭骨の主要部位が埋まっているようです。歯の断面直径は大きいもので4センチに迫ります。2006年に和歌山で発見されたモササウルス類の、倍以上の大きさです。この歯の主が、巨大な怪物だった可能性を示しています。さらにクリーニングを進め、進展があれば報告します。 【プロフィル】うつのみや・さとし 1969年愛媛県生まれ。大阪府在住。会社勤めをしながら転勤先で恐竜や大型爬虫類の化石を次々発掘、“伝説のサラリーマン化石ハンター”の異名を取る。長島町獅子島ではクビナガリュウ(サツマウツノミヤリュウ)や翼竜(薩摩翼竜)、草食恐竜の化石を発見。2021年11月には化石の密集層「ボーンベッド」を発見した。著書に「クビナガリュウ発見!」など。
(連載「じつは恐竜王国!鹿児島県より」)
南日本新聞 | 鹿児島
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