「正直に言えば自信を失っていた」高橋藍がいま明かすパリ五輪の後悔「僕や石川祐希選手が獲れず…関田誠大選手に迷いを与えてしまった」
大きな期待とともに挑んだパリで味わった失意。4年後に向けて自分自身のなすべきことは明確になった。イタリアから日本に移籍した今季。装いを新たにしたリーグの看板選手として新たなスタートを切った高橋藍が、パリ五輪を振り返った。 発売中のNumber1106号に掲載の[独占インタビュー]高橋藍「あの1点を獲り切れる選手に」より、内容を一部抜粋してお届けします。 【写真】「涙が止まらない高橋藍」「ブランの前で子供のように泣く西田」「静かに目を潤ませる宮浦」「健太郎は藤井さんと一緒に…」テレビでは映らなかった男子バレー“涙の円陣”を見る(100枚超)
パリ五輪、一体なにが足りなかったのか
バラエティ番組の収録やスポンサー関連のイベントへの参加、開幕を目前に控えたSVリーグのPR活動など、五輪後の高橋藍のスケジュールはすべて埋まっていた。休日は数えるほどしかなく、この日のインタビューもそんな忙しい合間を縫って行われた。 「9月はフル稼働でした。大変は大変ですけど、僕らはオリンピックでメダルを獲れなかったのに、これだけ注目してもらえるのはありがたいこと。欲を言うなら、もうちょっとだけ、寝たいですけどね(笑)」 今夏のパリ五輪、バレーボール男子日本代表は準々決勝で2時間41分の激闘の末にイタリアに敗れ、最終順位を7位で終えた。試合は日本時間のゴールデンタイム、20時から放送され、日本が何度もマッチポイントを握った末に逆転負けを喫した展開も相まって、多くの人たちをくぎ付けにした。試合後半の平均世帯視聴率は23.1%とパリ五輪全競技の中で最高の数字(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を残した。敗れてもなお、帰国後に高橋は「感動をありがとうと言われることが多くて、ありがたかった」と感謝するが、大会前に掲げた「金メダル獲得」という目標に届かなかったのも現実だ。 期待を背負い、志高く臨んだ五輪で、一体なにが足りなかったのだろう。
靭帯が1本切れて、もう1本は損傷していた
――予選ラウンド初戦のドイツ戦からフルセットの激闘でした。しかもマッチポイントからの逆転負け。試合中はどう感じていたんですか。 「ひと言で表すなら、すごく難しかったです。思い通りにいかないことが多かった。いつもなら獲れていたポイントが獲れない。ちゃんと打てているつもりだけど拾われるんです。大事な場面で噛み合わず、リズムもつくれなかった。1点を獲る難しさ、どうしたらいいのかという迷いを、ずっと感じていました」 ――開始早々にドイツのサービスエースやブロックで連続失点もありました。相手の素晴らしいサーブではあったけれど、高橋選手が簡単に弾かれるシーンには少し衝撃を受けました。 「右手に当たってバーン、とね。普段はあんな弾き方をすることはないですね。うん。前回ああいうミスをしたのがいつだったのか思い出せないくらいです。力が入りすぎていたんだと思います」 ――1月に負傷した左足首が、五輪前のネーションズリーグで悪化した、という報道もありました。実際の状態はどうだったんでしょう。 「靱帯が1本切れて、もう1本は損傷していました。切れたところが骨片ごと離れてしまっていて、その骨がジャンプするたび神経に触れてしまうので、痛み止めの注射や薬を飲んでも痛い。感覚的にも、絶好調の時と比べたら跳べていなかったし、いつも通りのプレーが出せていたかと言われたら、そうじゃない。高い位置で打てている感覚はあっても実際にはジャンプできていないので、ブロックに捕まる。ストレスを抱えながらプレーしていました」 ――大会前から不安があった? 「ありました。選手のコンディションもそれぞれ違うし、僕も万全ではなく、石川(祐希)選手もいい状態ではなかった。試合になれば上がっていくだろうと思っていたけれど、初戦でドイツに負けたのも大きかった。試合後や練習時の取材では『ここからです』と言っていましたけど、正直に言えば初戦の結果でだいぶしんどくなったと思ったし、自信を失っていました」
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