「正直に言えば自信を失っていた」高橋藍がいま明かすパリ五輪の後悔「僕や石川祐希選手が獲れず…関田誠大選手に迷いを与えてしまった」
関田選手に迷いを与えてしまった
――チームが崩れ始めたのはドイツ戦がきっかけなのか、それともその前から予兆はあったんでしょうか。 「五輪直前のポーランドとの親善試合はめちゃくちゃよくて、仕上がっている感がありました(世界1位の相手にフルセットで勝利)。でも本番は独特の雰囲気もあって、うまくいかないし噛み合わない。余分な力が入っていたり、いろんなストレスが重なる中でドイツ戦の結果もあってチームが慌てた。あたふたし始めたのかもしれません」 ――昨年の五輪予選も2戦目でエジプトにフルセット逆転負けを喫して追い込まれた。でもそこから立て直し、五輪出場を決めました。 「全然違いましたね。OQT(五輪予選)の時は自分自身の調子が良かったので、チームが負けていても最後は勝てる自信があった。『俺たちは強いんだ』と思いながら戦えていたんです。でも今回は自分も調子が悪いし、チームも崩れていた。まとまりという面でもOQTとは違いました」 ――その違いが生まれた原因は? 「僕や石川選手が獲るべきところで獲れないことで、(セッターの)関田(誠大)選手に迷いを与えてしまったんだと思います。ドイツに負けてからも僕は関田選手といろいろ話をして、どうしていくのがいいか、自分なりに解決しようとしました。最終的に託す、託されるのは石川選手ですけど、石川選手も調子が上がらず(3戦目の)アメリカ戦で3セット目に大塚(達宣)選手と交代した。そこでチーム全体がガラッと変わったと思います。僕自身も攻撃回数が増えて調子が上がったし、全員が『俺がやらないと』『ここまで来たらやるしかない』と思えた。不安が消えたとしたらあの時ですね。準々決勝進出を自力で決めるにはアメリカ戦で1セットを獲らなければならなかったので、何が何でも獲り切ろう、と思考がシンプルになった。試合は負けましたけど、アメリカ戦は一つ、吹っ切れる試合でした」
なぜ、最後の1点が獲りきれなかったのか
そして、迎えたイタリアとの準々決勝。日本は2セットを先取し、3セット目も24-21、3点をリードしてマッチポイントを迎えた。この状況になれば試合の趨勢はすでに決したと言ってもいい。多くの人が日本勝利を信じて疑わなかったはず。だが結果は、「あと1点」を獲り切れずに日本はフルセットの末に敗れた。 試合中、リベロの山本智大と随所で好レシーブを連発した高橋は「俺ら今日ヤバいな」と言い合っていたという。五輪までは、守備から流れをつかめば、日本は絶対に負けなかった。その守備は十分に機能していた。それでもなぜ、最後の1点が獲り切れなかったのか。悔恨の瞬間を振り返るとき、高橋の表情が変わった。
(「NumberPREMIER Ex」田中夕子 = 文)
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