【困難女性支援法】市町村の体制整備急げ(12月7日)
ドメスティックバイオレンス(DV)や性被害などに直面する女性を対象とした「困難女性支援法」が4月に施行されて半年余りが経過した。相談窓口の設置などを含む基本計画の策定や女性相談支援員の配置が市町村の努力義務とされているが、県内では体制整備が十分とは言えず、対応を急ぐ必要がある。 支援法は県の基本計画や国の考え方を参考に市町村単位の基本計画策定を求めている。計画には自治体庁内の関係部署の役割分担や連携体制なども盛り込むよう定められた。県内市町村が策定準備を進めている。女性相談支援員は、研修で身に付けた専門知識に基づき相談・支援を担うが、配置済みは福島、会津若松、郡山、いわき、喜多方の5市にとどまっている。 「支援方法の情報が足りない」との声が市町村から県に寄せられている。策定を進めていない会津地方の町の担当者は「職員が限られて手が回らない」と明かす。支援員が54市町村で未配置の背景を、県は必要性への理解が進まず、財政難も障壁になっているとみている。地域全体で女性の被害防止への機運づくりを進めなければならない。
県と、支援員を置く5市の窓口に女性から寄せられた相談は2023(令和5)年度、5493件で前年度比で28件増えた。3割程度が夫からのDVに関してだった。女性が被害から逃れ、新たに生活を始める場合、市町村は住居確保や生活保護などの手続きを担い、自立を後押しする。体制が十分でないと、被害女性の負担を一層大きくする懸念もある。国、県は各自治体の実情を聞き、後押しする施策を講じるべきだろう。 支援法には民間団体の役割も盛り込まれた。女性と行政のつなぎ役となって早い段階から相談に乗り、切れ目のない支援をするよう期待している。県が把握する支援団体は郡山市のウィメンズスペースふくしまと、いわき市のいわきふれあいサポートがある。郡山市の団体の関係者は「市町村窓口は相談しにくいと感じる女性もおり、間に入る存在が必要」と強調する。「ボランティア頼みで人手や資金が不足し、運営は厳しい」とも訴える。個別事業への補助制度はあるが、運営費自体の財政支援も行政側に求められるのではないか。(佐久間裕)