大日本印刷にマネックス系ファンドが株主提案、経営学者・楠木建氏の社外取締役選任で経営改善を狙う
一般的にモノ言う株主が社外取締役の選任を要求する背景には、現経営陣に対する強い不信感がある。東芝やオリンパスが典型例だが、ファンド側が経営体質改善のために経営陣を監視する目的で自らの腹心を送り込むケースが多い。 今回提案されている楠木氏とマネックスの間には「一切の利害関係はない」(リリース)という。だが、楠木氏はマネックスが開いたフォーラムで基調講演を行うなど、一定の意思疎通があるのは間違いない。
そもそも、DNPを巡っては、以前からガバナンスに関する問題点が指摘されてきた。2018年に就任した現社長の北島義斉氏は、前社長で今年2月に亡くなるまで会長だった北島義俊氏の息子。その義俊氏も父の跡を継いで社長に就いた。つまり、DNPでは3代にわたり、父親の跡を息子が継ぐ”世襲”が続いている。 今後はDNPの取締役会が株主提案に賛同するかどうか、現経営陣の判断を踏まえて株主がどう判断するかが焦点となる。ファンド側の勝算はどの程度あるのだろうか。
マネックス・アクティビスト・マザーファンドの持ち分はそう大きくない。直近の開示によれば、保有している議決権は0.3%程度と推定され、単体での賛否への影響力は乏しい。 ■カギを握る外国株主の賛否 ただ、DNPの株主構成を見ると、モノ言う株主として有名なアメリカのエリオット・マネジメントが4%前後の議決権を保有しているとみられるほか、外国株主の比率が約27.8%(株式数ベース)と高い。外国株主は米ISSなど議決権行使助言会社の影響を受けやすく、ファンド側につきやすい。
上位10位の株主には、第一生命保険やみずほ銀行など金融機関が名を連ねる。こうした大株主などからの賛成を取り付けることができれば、経営陣が反対しても勝算がぐっと高くなる。 株主の3分の2以上の賛成が必要となる定款変更と比べて、過半数で可決される取締役の選任議案はハードルが低い。しかも、提案を受ける側の企業にとっては提案を拒絶する理由をつけるのが難しく、比較的ファンド側が勝ちやすいといわれている。 一連の提案に関し、東洋経済はDNP側にコメントを求めているが現時点で回答は得られていない。
創業明治9年(1876年)の老舗企業は株主からの提案にどう対応するのか。今後の展開が海外投資家も含めた資本市場からの関心を集めそうだ。
梅垣 勇人 :東洋経済 記者