沼津港深海水族館に聞く! 摩訶不思議なシーラカンスの世界【へんないきもの・深海魚編 vol.01】
約3億5000年前の海の世界、その記憶を現代に伝える魚がシーラカンスです。もともとは川や湖にもいたそうですが、今は深海にのみ生息しています。光のない深海で命をつないできたシーラカンスですが、貴重な剥製と冷凍標本を沼津港深海水族館 シーラカンス・ミュージアムで見られます。 【写真】沼津港深海水族館シーラカンス・ミュージアムの展示を見る(全4枚) 謎多き神秘の魚・シーラカンスについて沼津港深海水族館 シーラカンス・ミュージアムの展示解説員・山口真由さんにうかがいました。
約3億5000年前からの姿を今にとどめる神秘の魚
シーラカンスは生きた化石とも言われ約3億5000万年前から存在していると言われています。 「シーラカンスは、一度は絶滅したと思われていました。しかし、1938年に再び発見され、現在、アフリカのコモロ諸島やインドネシアで確認されています。一度絶えたと思われた生きた化石が現代に存在しているということに、ロマンを感じます」(山口さん)。 かつては高額の懸賞金が出るなどその希少性から、幸運を呼ぶ魚とも言われていたそうですが、現在は捕獲禁止となっています。 「たまたま、釣り上げられたのがアフリカとインドネシアですが、日本にも駿河湾のような深海があり、深海の世界はまだまだ分からないこともあるので、あくまでも想像ですが、もしかしたら日本の近くにもいるかもしれないですよね」(山口さん)。
深海ならではの環境が太古の魚を現代に伝えた
かつて、シーラカンスは多くの種類が存在し、川や湖などの淡水にも生息していましたが、26属に分類されるうち、今は深海に住む2種類のみが確認されています。 「一説には、深海の環境が氷河期などの影響もさほど受けず、安定した世界だったからではないかと言われています」(山口さん) まさに、神秘の深海だからこそ起きた奇跡ということかもしれません。
背骨がなくてヒレに関節があるのが大きな特徴
ところで、シーラカンスと普通の魚の違いとはどのような点があるのでしょうか。 「シーラカンスが他の魚と違うところは、背骨がないんです。脊椎動物なのに不思議ですよね。かわりに、脊柱という、ちくわのような形をした器官があるんです。筒状で中に体液がつまっています。また、体の中が柔らかい分、うろこは鎧のように固いんですよ」(山口さん)。 不思議な体をしたシーラカンスですが、ヒレにも大きな特徴があるそうです。 「シーラカンスのヒレの付け根には骨があって関節があるんです。肉付きもよくて、ヒレをくるくる回すこともでき、自在に動かして泳ぐことができるんですね。尾ヒレは小さくて、だから早く泳げないのですが、その分、とても小回りが利いて、器用な泳ぎ方ができるようなんです」(山口さん)。