『VOCE』のメイク特集にも登場!「なでしこジャパン」攻守の要・清水梨紗「金メダル獲りたいです」
「スタジオ撮影、楽しかったです。こういうの、好きなんです♡」 座ったままカメラに向けておっとり微笑む――。パリ五輪サッカー女子日本代表、清水梨紗(28)は不動の右サイドバックだ。戦術眼はもちろん、守備からの攻撃参加を求められるこのポジションで清水に勝てる日本人女子はいない。 【画像】清水梨紗『VOCE』のメイク特集にも登場した「なでしこジャパン」攻守の要 2大会連続で五輪メンバーに選出されたが、この3年間、清水の心の片隅にはあるシーンが刻み込まれていた。’21年、東京五輪準々決勝のスウェーデン戦。1-1で迎えた後半8分、日本の右サイドで清水はフォワードのブラックステニウスに振り切られ、ニアをぶち破る勝ち越しゴールを決められた。なでしこジャパンはメダルにも遠く及ばず、ベスト8に終わった。 「自分がウラ(背後)を取られて失点したのですが、国内であんな抜かれ方をしたことがなくて……自分は五輪に懸けていたので、私はこのままでいいのか?と考えさせられました」 日本人相手には感じたことのないウラ取りの巧みさとスピード。敗戦につながる痛恨の失点。試合後、清水はピッチ上で人目もはばからず号泣した。 ◆「海外でプレーの考えがなくて」 2度と同じ失点をしたくない――。清水は一大決心を固めた。 「そもそも、海外でプレーしたいという考えが私にはなくて……。でも、東京五輪のあのシーンがきっかけで欧州移籍を考えるようになりました」 6歳でサッカーをはじめ、中学から日テレ・ベレーザの下部組織に入団。東京五輪から1年後の’22年8月、13年所属した日テレ・ベレーザを初めて離れ、イングランドのウエストハム・ユナイテッドに入団した。 「26歳での移籍は一般的には遅いかもしれませんが、私としては良いタイミングだったと思います。日本で良い指導者に恵まれて、監督に言われたことを消化しつつ、何か問題が起きたときも、自分なりに解決策を考えられるようになっていましたから」 全12チームで争うイングランドの「ウィメンズスーパーリーグ」で、清水が在籍したこの2シーズン、ウエストハムは8位、11位と低迷した。これ自体が清水にとってはじめての経験だった。 「イングランドでほぼ試合に出続けたことは自分にとってプラスでした。弱いチームだったので試合の中で1対1とか守備の機会が多かった。守備面の向上を求めて海外に行ったのですごく良かった。ベレーザにいたときはいつも優勝争いでしたが、ウエストハムでは残留争いだったので、また違った複雑な感情や難しさを経験できた」 守る時間が長く、少ない人数で攻め切らざるを得ない経験の中で、清水の特徴の一つでもある攻撃力にも磨きがかかった。実際、なでしこジャパンの仲間から「一人で局面を打開できる回数が増えたよ」と言われたが、「手ごたえよりも、苦しみのほうが多かった」と清水は言う。 「試合後、頭に残るのは良いプレーより悪いプレー。反省から入ります。たとえばフォワードの選手は自分の得点シーンを死ぬほど見るじゃないですか。ただ、サイドバックは守備が基本のポジションなので、私は失点シーンを死ぬほど見る。決してネガティブな性格ではないんですけどね」 失点シーンにはポジション柄、清水がどこかで関わっている。振り返りたくない、忘れたい場面と真正面から向き合ってこられたのはきっと、東京五輪で味わった悔しさへのリベンジの思いからに違いない。 なでしこジャパンといえば、’11年のドイツワールドカップ(W杯)優勝、’12年のロンドン五輪銀メダルと世界の頂点を争ったが、’15年のカナダW杯で準優勝して以降、ベスト4にも入れていない。 「’11年当時、私は中学生で、なでしこジャパンの一ファンでした。W杯で初優勝したメンバーが所属チームに戻り、なでしこリーグ(当時)が再開すると、私は日テレ・ベレーザの試合運営を手伝いました。ボールガールもやりました。試合のパンフレットは飛ぶように売れました。なでしこの活躍が、人気に直結することを身をもって感じました。 自分がなでしこに入って、あらためて先輩たちのすごさを感じています。アメリカに勝ったW杯決勝はなでしこに入って2回は見ていますけど、いつも鳥肌が立っちゃいます」 来(きた)るパリ五輪、目標は一つだ。 「金メダル、獲りたいです。言葉に出さないと叶わないと思うんです。若い頃から世界大会で悔しい思いばかりしてきたので、金メダルへの思いは強いです。チームに還元できることは全部やって、全力で毎試合戦います!」 『FRIDAY』7月26日・8月2日合併号より 取材・文:了戒美子
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