モーターは「ホイール」の中! べデオ・ランドローバー・ディフェンダー EVへ試乗 低価格化へつながる?
静かでキビキビ 悪路での運転練習に理想的かも
筆者が初代ディフェンダーを運転したのは、だいぶ前だ。ディーゼルエンジンのノイズが、車内へ大きく響いたことを覚えている。現代の技術者なら音振の酷さに呆れるかもしれないが、それもクラシックカーとしての味だった。 エレクトロモッドされたディフェンダー 110は、スタートボタンを押しても極めて静か。重たいクラッチペダルを踏む必要はない。 ハンドブレーキ・レバーは従来のまま。曖昧なステアリングの反応は変わらない。これを失ったら、ディフェンダーらしさは一層薄れるだろう。 試乗は、ファーンハムの市街地からスタート。右足の角度に合わせて、線形的で滑らかにパワーが展開される。キビキビと走れるほど、加速の勢いは鋭い。息が詰まるような、圧倒的なトルクは放たれない。 回生ブレーキは自然。ブレーキペダルを踏まずに止まれる、ワンペダルドライブに対応する。ディフェンダーのカタチをしているが、渋滞に紛れても運転しやすい。 流れが速い、郊外の道でも問題なし。優しい揺れがお尻へ伝わるのを感じながら、記憶と違わない感触のステアリングホイールを回す。 続いてオフロードへ。デモ車両には、テレインレスポンスやドライブモードは備わらない。両手両足で、直接操ることになる。悪路での運転練習に理想的かもしれない。 ホイールの内側へ、モーターが入っている実感はない。比較対象がないから評価しにくいが、ぬかるんだ道をスルスル進んでいく。さほど過酷なルートではなかったものの、難しいことは一切なかった。
さらに魅力的になったと感じる人はいる
電動化されたことで、魅力の一部がなくなったと感じる人はいるだろう。反対に、さらに魅力的になったと感じる人もいるはず。クラシックカーを現代化して、日常的に乗りたいと考える裕福なオーナーは、少なからず存在する。 このディフェンダー 110は、同社が掲げるリボーン・エレクトリック・アイコンと呼ばれるプログラムの、最初のデモ車両。CEOのオスマン・ボイヤー氏は、実際に普段使いしていると話す。子どもの学校への送迎にも活躍している。 ベデオ・グループが、直接クルマを売る計画はない。エレクトロモッドを実施する企業へ、独自の電動パワートレインを提供することを、事業の中心に据えたいそうだ。 それに向けて毎年1台ずつ、デモ車両としてクラシックカーを電動化する計画が立てられている。空冷のポルシェ911も、そこには含まれているらしい。
マーク・ティショー(執筆) 中嶋健治(翻訳)