ドジャースの「一緒に戦う姿勢」 崖っぷちのパドレス戦を乗り越えたチーム全体のケミストリー
【大谷ドジャース世界一の舞台裏①】米大リーグで大谷翔平投手(30)と山本由伸投手(26)が所属するドジャースが2020年以来、4年ぶり8度目のワールドシリーズ制覇を果たした。世界一の舞台裏には何があったのか。全5回の連載で振り返る。(大リーグ取材班) 【写真7枚】ファンに手を振る大谷翔平 結束-。世界一を勝ち取ったキーワードだ。ドジャースは資金力が豊富でスター選手をそろえ、レギュラーシーズンでは過去12年で11度のナ・リーグ西地区優勝。今季年俸総額は3億2500万ドル(約500億円)で、メッツの3億3500万ドル(約511億円)に次ぐ2位。巨大戦力を誇り2022年は111勝、昨季は100勝を挙げた。しかし、いずれも地区シリーズで敗退した。 「ここまで来るのがどれほど大変か、忘れることはない」。ドジャース生え抜き10年目の控え捕手、バーンズが振り返った。前回20年のワールドシリーズ制覇を知る一方、過去2年の苦渋も味わった。今季は昨季までと何が違うのか。 「チームの『ケミストリー(化学反応)』だと思う。普通に聞こえるかもしれないが、一緒に戦う姿勢が大切だ。特にパドレスとの地区シリーズは自分たちにとってすごく重要だった」 ポストシーズンを通して、ドジャースが最も苦しんだパドレスとの地区シリーズ(5回戦制)。リーグ優勝決定シリーズ、ワールドシリーズを含め唯一、1勝2敗とリードを許し、崖っぷちに立たされた。「あの地区シリーズを乗り越えられたことでみんなが助け合うことができた。良いチームには特別な何かがあるんだ」。チームを支える34歳は実感を込めた。 10月6日。パドレスとの地区シリーズ第2戦を2-10で落とした後、サンディエゴに向かうバスが〝ターニングポイント〟だった。遠征先とはいえ、ロサンゼルスからサンディエゴまでは車で約2時間。選手は家族を乗せた自家用車で向かうのが恒例だが、1台のバスに乗り込んだ。 若い選手がスピーチ役に指名され、爆音で音楽をかけた。「ショウヘイ、次は何の曲がいい?」。英語が第一言語ではない選手も会話に入るようベテラン選手が気遣い、スター選手同士が密な時間を過ごした。 チャーター機も同様。通常は家族同伴だが、選手と家族を分離した2機で移動した。ワールドシリーズ第3戦を前にニューヨークに到着後、練習を終えたナインはイタリアンレストランで決起集会を行った。実力と実績のある選手たちが結束し、一丸となることで生じた「ケミストリー」。強かったのは、必然だった。