【バスケ日本代表】W杯王者ドイツ戦で確信した日本の強さ 「もしかして」が期待できる短期決戦【元日本代表・石崎巧の目】
河村勇輝と八村塁 “五輪レベル”のピックアンドロール
日本が誇る絶対的な「個」はやはり八村塁。 フィジカルの強さ、ドライブのスピード、中距離も含めたシュート範囲の広さは組織化された堅い守備を持つドイツに対しても単体で大きな脅威となった。 八村がローポストでボールを持った状況では複数人で止めにいく守り方が準備されていて、ドイツ側からの明らかな警戒が見てとれた。 そしてもう1人、存在感を示したのは河村勇輝だった。 前半にジョシュ・ホーキンソンと2回、八村と1回見せたピックアンドロールは、河村の世界のレベルへの対応を表すものだったように思う。 この3回のプレーに対してドイツは3種類の守り方を仕掛けてきたが、河村は的確に守備の急所をつき、オフェンスを成功させた。これは本戦前の強化試合では見られなかったプレーだ。 ドイツ戦、セルビア戦ともに、河村は相手チームのフィジカルでハイスピードなディフェンスに順応できず、精彩を欠いた。 ピックアンドロールの際にプレッシャーを嫌がったのか、ディフェンスからかなり距離を取ったコースのドライブに終始してしまい、チャンスを生かすことができていなかった。 資質はあるものの、世界レベルでの経験が不足していたために有効な判断ができていないように感じた。 しかし彼はこの短い時間で過去の経験を利用し、大幅な改善を見せた。 ボールサイドコーナーに人を置かない状況での河村と八村によるウイングピックは、いまや再現性の期待できるオフェンスオプションとしてオリンピックレベルでも通用するのではないだろうか。 そのトリガープレーがチーム全体の3Pのシュートクオリティを引き上げ、大番狂わせを現実のものとする。 そんな想像が大いに膨らんだ初戦の出来栄えだった。
3P攻勢 運次第でジャイアントキリングに
ワールドカップを制したドイツ代表との差は、ほんの10年ほど前の日本代表にとってアジアチャンピオンとの距離感だった。 これだけの短期間で様変わりした現状に対して驚きと懐疑の念が頭の中でせめぎあっていたが、今の日本代表はここが現在地だとはっきり示した。 古い人間の正直な気持ちを言わせてもらえれば、もう十分に満足な成果でこれ以上を望むべくもない。 一方で、日本代表の採用している戦術の可能性を考えれば、もしかしてと思うこともある。 極端なまでに3Pアテンプトの比率を高める構成は、誰にも操作することのできない「運」次第でジャイアントキリングを実現するための強力な武器になる。 短期決戦の国際大会だからこそ外れ値の発生は効果が絶大で、そしてそれは格下の特権とも言うべき戦い方だ。 運がくれば勝てるかもしれない、と思えるレベルまでになった日本代表を誇りながら、「そのとき」は次戦か、次々戦か、あるいはその両方か。 楽しい妄想はまだまだ続きそうだ。 (元日本代表 石崎巧)
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