「無知は弱いけど、強いんです!」…大企業を辞めて「斜陽産業で起業したら超大変だった!」、女性起業家が明かす「過酷な現実」と「斜陽だけど『大丈夫』なワケ」
出版が斜陽産業と呼ばれて久しい。昨今では、経済産業省を中心とした書店支援策が取り沙汰されるようになった。本を介した異性とのマッチングサービス「Chapters」を運営する「MISSION ROMANTIC」代表取締役の森本萌乃さんも実感をこめて言う。 【写真】これから給料が「下がる仕事」「上がる仕事」全210職種を公開…! 「起業して5年が経ちますけど、本当に本って売れないんだなと痛感しました。こんなに? って疑うほどです」 そんな森本さんが著者となったビジネス小説『あすは起業日! 』がいま話題だ。広告代理店・電通を辞めてオンライン書店を起業したみずからの体験を踏まえて、働くことや女性起業家の“リアル”が描かれているからだ。そんな森本さんに「想い」を聞いた。
「斜陽産業」で資金調達は超大変、その過酷な現実
「Chapters」のサービスは、まず書店員や編集者、「Chapters」のスタッフが、季節やトレンドなどをもとに4冊の文庫を選ぶ。会員がそのなかから1冊を選び、同じ本を選んだ異性とマッチングする「恋する書店」だ。 起業前、森本さんは悩んでいた。マッチングサービスを利用していたのだが、思うような出会いに恵まれない。そんなときに古いアニメ映画を観る。『耳をすませば』。稲妻に打たれたような衝撃を受ける。これだ、これが本が持つ力だ、と。 「本を通して人が出会う――最高のアイディアだと確信しました。映画のように本棚で同じ本を取ろうとした人と手と手が重なるようなサービスがあれば、冗談じゃなくて何百万人以上の出会いに悩む人をきっと救えるはずだと思ったんです」 だが、現実は厳しかった。現在の「Chapters」の会員は延べ6000人。書籍を取り巻く苦境は、森本さんの新著『あすは起業日! 』でも描かれる。 主人公の加藤スミレは、起業し、AIによる選書サービスを行う事業をはじめようとするが、資金調達に苦戦する。 「本は斜陽産業なのでVC(ベンチャーキャピタル)はまず投資しないでしょうね」 「ジャンルが小説という点も、またさらに前時代的というかなんというか」 「事業内容はAIの領域だし興味はあるけど、本じゃあねぇ。マーケットが小さそうですよね、商材を変えるのはダメなんでしたっけ?」 「本は卸値がほぼ決まっていて原価率が高い分、利幅を確保するのが難しいですよね。何十万人が使うようなスケーラリビティもない」 行く先々で呈されるスミレへの苦言が、出版のいまに突き刺さる。それでもスミレが本にこだわったのは〈本代は生きるための必要経費〉とまで記し、「本が好き」と繰り返す森本さんが投影されているからだ。