システム障害で営業停止、ランチ予定が白紙に…店舗は客個人の“私的損失”をどこまで補償してくれるのか
経営を守るために熟考する“免責事項”の内容
保険会社も含め、補償をする側は、補償額が過大な場合、経営が圧迫される可能性も出てくる。そこで、そうした企業は、支払いによる経営リスク最小化のために契約においては特定条件下における免責事項を設定するのが一般的だ。 たとえば、アメリカン・エキスプレスのプレミアム・カードは、直近3か月連続で通信料の決済を同カードで行っている場合、購入後36ヶ月以内のスマホに対し、1回の事故につき、5000円の自己負担のみでOKとしている。 なかなかの手厚さで、機器の破損、火災、水漏れ、盗難に対しても補償してもらえる。ただし、故意の破損はもちろん、「サイバー損害による端末の損害」も、補償の対象外となっている。対象外の多くは、破損原因が純粋に端末に起因しないものに設定されているが、“サイバー損害”もそれらと同列ということだ。 システムが社会の重要インフラに定着したいま、その障害による影響は甚大で、世界規模にもなり得る。逆にいえば補償する側の企業は、システム障害発生を見据え、「免責事項」への記載事項を十分慎重に検討することになる。 そうだとすれば、システム障害の補償は「気休め程度」と考え、デジタル社会ではいつでも起こりうるリスクのひとつと受け止め、発生した場合にどう対処するかを事前に想定しておくのが、システム障害に困惑し、振り回されないための賢明なスタンスといえそうだ。
弁護士JP編集部