システム障害で営業停止、ランチ予定が白紙に…店舗は客個人の“私的損失”をどこまで補償してくれるのか
システム障害に対する補償側のスタンス
システム障害発生で大きな損失が考えられる金融系などでは、補償についてはよりシビアだ。たとえばSBIネオトレード証券は「お客さまの損失を補塡(ほてん)することはできません」と明言している。その理由として、「システム障害により発注ができず損失が拡大した場合等の『機会損失』については、約定値の確定ができず、損失額の算出ができないため」と説明している。 さらに同社は「機会損失に限らずシステム障害による全ての損失において、補填を保証していません。お客さまには、当社の約款および商品の取引規程をご熟読いただき、リスク等を十分に理解した上で、お客さまの判断と責任においてお取引をお願いしております。なお、当該リスクには、システム機器、通信機器等の故障等、不測の事態による取引への制限が生じる可能性も含まれますので、予めご了承願います」としている。 2023年10月10日にシステム障害に見舞われた全国銀行データ通信システムは、その約1週間後に損失補填についての考え方を公表。「重要なインフラである」としたうえで、手数料、延滞金・遅延損害金、貸出金利/貸越金利等、直接的な金融取引で発生した追加費用等がその対象であるとした。
ビッグマックを食べ損ねた補償は現実的なのか
では、上記のマクドナルドのようなケースで、「今日はランチでビッグマックを食べるぞ」と楽しみしていた顧客が、「その機会を奪われた」と同社を訴えた場合、なんらかの補償を受けられるのか。 「具体的なケースによりますが、現実的にはなかなか難しいでしょう。どうしてもその日のランチでビッグマックを食べる必要があるかといえば、客観的にはそのようなことはないでしょうし、通常、一般的な飲食店では事前に店舗側とそうした契約も結んでいないでしょうから」と辻本弁護士は説明した。 そのうえで、「もちろん、契約上の義務はないとしても、例えば、店舗側が誠意や配慮を示すという意味でクーポン等を配布するなど何らかの対応をするケースは考えられるかもしれません。ただ、モバイルオーダーで事前決済をしていた場合等、システム障害でそれがキャンセルになってしまったなどといったケースならおそらく返金はされるでしょう」と誠意を示す意味の“補償”はあり得るとした。