自民党総裁選での経済政策論争⑤:社会保障制度改革
応能負担が答えか
加藤氏や河野氏、社会保障制度の持続性を高めるため、財源確保で応能負担を進める考えを示している。 上川氏も、「団塊ジュニア世代が65歳以上となり、人手不足が深刻化する「2040年問題」を見据え、社会保障制度を抜本的に改革する。持続可能な仕組みのため、資力のある人には年齢を問わずに負担してもらうことが必要だ」と、時事通信のインタビューで語っている。 政府が検討する高齢者の医療介護の自己負担増について、共同通信のアンケートで、河野氏だけが「求めるべきだ」と答え、残る8人は明言を避けた。将来の年金給付水準底上げに向けて、国民年金と厚生年金の財源を一体化するとの政府案には、河野氏、高市氏、加藤氏の3人が賛成した。 社会保障制度改革の重要な方向性の一つがこの「応能負担」であることは間違いないだろう。問題は、どのような基準に基づき、誰に負担増を求めるかである。 年齢と所得に基づく給付と負担という従来型の仕組みでは、社会の変化に追い付かず、制度の持続性を十分に高めることはできないだろう。受給資格や負担能力には、保有資産額も考慮していく必要があるのではないか。 持続的で安心な社会保障制度を確立するには、給付と負担のバランスを社会の変化に応じて常に見直していくことが必要になる。それには国民に追加の負担を求める「痛み」も避けられないはずだ。また、そうした見直しを、高齢者の労働供給の促進といった要素も考慮しながら進めなければならないという非常に複雑な状況に、現在、日本は置かれている。 (参考資料) 「【主張】総裁選と社会保障 痛み伴う改革も論じ合え」、2024年9月22日、産経新聞 「社説 自民・立民W党首選 社会保障政策 負担のあり方避けずに」、2024年9月18日、東京新聞朝刊 「社会保障改革、最優先で=上川陽子氏インタビュー-自民総裁選」、2024年9月21日、時事通信ニュース 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
木内 登英