誰もやっていないことにトライしたい、木村昴が「声優のイメージ」にとらわれない理由
木村昴だからできる「前代未聞」の夢とは
──ちなみに今回はフランス語作品の吹替ですが、英語作品や他の言語とかとアプローチや大変さは違ったりするんですか? アプローチは特に変わらないんですけど、僕の場合は英語はわかるので、英語作品だとすごくやりやすいというのはあります。もとの表現がわかる分、例えば直訳すると難しいから日本語だとこうなっているんだな、というところまで理解できる。場合によっては「これは皮肉なのか? いや、それとも意地悪で言ってるのか……?」みたいな微妙な感じでも、もとの英語から汲み取れたりするんですよね。英語だとそういうやり方ができるというのに慣れていたので、フランス語はまったくわからなくて大変でした(笑)。 ──素朴な疑問ですが、外国語映画の吹き替えの場合、アニメとは違って生身の人間がもともと演じているものに合わせていくわけですよね。そこの部分の難しさはありますか? ありますね、アニメと吹替は全く別物だと思っています。「お芝居」という大きなくくりでは一緒ですけど、キャラクターの作り方から全然違う。アニメの場合は「画に声をあてる」という作業の分、お芝居の余白のようなものがあるから、いろいろトライできる。でも吹替は既にオリジナルのものがあるし、かつその言語がわからない人が不自由なく楽しめるための、ある種ガイド的な役割を持っている。そこに声優の個性とかが出てくると、聞いてられなくなっちゃうと思うんですよ。だからなるべくオリジナルの俳優さんのニュアンスやテンション、声の感じみたいなのを引き継ぎたいんですよね。 というのも僕自身、外国語映画を見ていて意地悪な見方をするときがあって。「あれ?」と思うとそのシーンを何回も再生して、英語、日本語、英語、日本語みたいに切り替えて確認したりするんですよ。ほらもとのセリフ全然違うじゃんー! みたいな(笑)。もちろん、それは仕方がないことではあるんです。でもなるべくそういうことを少なく、もとのニュアンスに近づけたいな、という思いはありますね。 ──最近の木村さんはアニメや外国語映画の吹き替えといった声優としてのお仕事だけでなく、バラエティにも出ればドラマにも舞台にも出られていて、すごくマルチに活動されている印象です。ご自身としては「この先こういう風になりたい」というビジョンなどはあるのでしょうか? なんでしょうね……なんか、「前人未到」とか、「世界初」とか好きなんですよ。そういう、誰もやっていないこと、初めてのことにトライしてみたい欲があって。実は最近ちょっと考えてることがあるんですけど……いや本当に大層な夢ではあるんですけど、例えばハリウッド映画に僕自身が出演して、いわゆるハリウッドデビューってやつですね。その映画が日本で公開される時に、自分の体に自分で吹替をしたい! と。それってちょっとレアじゃないかなと思うんですよ。 ──それ、すごくいいというか、木村さんなら実現可能な気がします……! 本当ですか!?(笑) この間、真田広之さんの『SHOGUN 将軍』を観てたんですけど、あれの英語吹き替えが真田さんじゃなかったんですよね。となると、本人も外国語の吹替も……ってまだやってる人いない!?と。気づいて「よっしゃー!」ってなって。だから今の夢はそれです。 ──いや、それはぜひ実現してほしいです。 ありがとうございます、頑張ります。あとケバブ屋もやりたいです。 ──いきなりのケバブ屋(笑)。 マジで飲食店やりたいんですよね。