誰もやっていないことにトライしたい、木村昴が「声優のイメージ」にとらわれない理由
国民的アニメのキャラクターを演じていたかと思えばステージで見事なラップを披露し、バラエティやドラマでも活躍して、テレビでは元気な「朝の顔」を毎日見せる……近年、その活躍ぶりと多才ぶりに拍車がかかる声優・木村昴。そんな彼が主人公・カレブ役の吹替を担当した『スパイダー/増殖』は、毒グモが脱走、アパ―ト内で繁殖・増大し住民たちに襲い掛かる姿を描いたフランス製のパニックホラーだ。 11月8日まで一週間限定公開されていた今作の話から、活動範囲が広がる自身の状況について、そして「今後やりたいこと」について……いつも明るくエネルギッシュなイメージの彼が、いま考えていることとは。 【撮り下ろし写真15枚】国民的アニメの声優だけでなく、バラエティやドラマなどエネルギッシュに活躍する木村昴
こういうのがダメなんだな、ということに気づけた
──最初にこの作品を観たときの感想は? 気持ち悪かったです(笑)。 ──正直ですね(笑)。 今まで蜘蛛を別に嫌いじゃなかったというか、意識したことがなかったんですよね。でも嫌いになりました(笑)。あんなにいっぱい出てきてね……そういう意味では、新鮮な気持ちを味わいましたね。 ──蜘蛛だけでこんな怖いし気持ち悪いんだ! っていう発見がありますよね。 そうなんですよ。あと、他にも虫がいっぱい出てくるので。割と最初の方の場面なんですけど、それも画面に出てくるだけでダメでした。あ、こういうのがダメなんだな、ということに気づけましたね、今回。これまで苦手な動物とかいなかったんですけど……だって日本だと部屋に蜘蛛が出たら殺しちゃダメとか、ちょっとラッキーくらいの感じじゃないですか。この映画観ちゃったらもうダメですよ、多分(笑)。 ──最初にオファーが来たときの感想としてはどうでしたか? 変な言い方ですけど、この手のパニック映画って「パニックになるけど、中身はない」的な作品が多い印象で。でもこの『スパイダー/増殖』は、人間関係がすごくしっかり描かれているんですよね。見方によっては、人間関係を蜘蛛を通して描いているようにすら見える。そこがすごく意外だったんですよ。しかも「いや、感動するんかい!」という。そこがすごく新鮮でした。 ──わかります。 主人公が「うだつの上がらない人生」から、この出来事を通して一人前の男になっていく。そこも新しいな、と。そういう意味ではしっかりフランス映画らしさがあるんですよね、この作品は。 ──木村さんが演じられるカレブは、すごく繊細なキャラクターですよね。 そうなんですよ。よくある「バカやって巻き込まれる」とかじゃないんですよね。母親を亡くして妹とも友達ともうまくいっていなくて……という前提があり。そこもしっかり丁寧に描かれてますしね。だから、この映画っていわゆる「パニックホラー映画」のジャンルに入るんでしょうけど、パニックホラーではあるけどなんか感動する、泣ける、みたいな映画を求めてる人にもハマると言うか、一緒に体験できます。 ──あっという間に巻き込まれていって疾走感が凄い映画だったんですが、こういう映画の吹替って大変ですか? 大変です! というのも、オリジナルのキャストさんたちがすごくパワフルで、叫ぶシーンとか凄いんですよね。で、それを吹き替えるなら負けたくないじゃないですか。「吹替はあんまり盛り上がらなかったね」みたいに言われたら嫌だなと思って、全力でやらなきゃ……みたいなプレッシャーはありました。だから基本はずっと叫んでるんですよ(笑)。 ──それでいて繊細な演技も必要で。 そうです。でもこの作品、主人公のカレブにだんだんとリーダーシップというか、責任感みたいなのものが生まれていくところがいいんですよね。グッとくるというか。ある意味彼の成長を見せる作品でもあるので、そういう部分を意外に感じてもらえるといいかな、と思っています。ぜひ吹替で観てください!(笑)。