「地盤が硬ければ安心」ではない? 熊本地震にみる地盤と建物倒壊の関係
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9月1日の「防災の日」に合わせて、地震の基礎を学んでみましょう。地震は地面が揺れることなのは誰もが知っているはずです。「地盤がゆるい」と揺れが大きくなることも想像できるでしょう。しかし、地面の上に立つ建物の被害は、「ゆるい地盤=軟弱地盤」だから大きくなるとは、必ずしも言えません。逆に言うと、硬い地盤だから安心だとも言えないのです。「地盤と建物の関係」を突き詰めてきた名古屋大学減災連携研究センターの福和伸夫センター長が模型を使って解説します。 【写真】続く余震「車中泊」の悲劇どう対応? 熊本地震の教訓「7つの備え」(下)
揺れは「周期」が一致すると増幅される
同センターが新しく作成したのは、軟弱地盤の「厚み」によって揺れが違うことを表す模型です。一般的に川の近くなどは軟らかい砂礫層が堆積し、そこから離れるほど軟弱地盤は薄くなって、地盤は硬くなります。 揺れは「周期」という言葉で説明されます。周期はものが揺れたときに、1周して元に戻ったときの時間です。例えば振り子が力を加えられ、左右に揺られて元の位置に戻るのに1秒かかったら、その振り子は「周期1秒」の運動をしたことになります。 同じ力を加えても、振り子の棒が短ければ揺れの時間は短く、棒が長ければ揺れの時間も長くなります。例えば、10階建てのビルの最上階よりも、40階建ての超高層ビルの最上階の方が揺れが大きくなる現象もこの原理と同じです。 これは材質によっても違い、硬いものは小刻みに揺れ、軟らかいものは長く大きく揺れるのが特性。前者の周期より、後者の周期が長いと言えます。 動画で模型を見ると、同じ力が同時に加わっているはずなのに、縦に何本かに分けた 地盤の厚さによって揺れの違いが分かるでしょう。その上の建物に見立てた振り子は、同じ長さで同じ赤い重りが付いているのに揺れ方がバラバラです。ちょうど模型の真ん中あたりの振り子が大きく激しく揺れています。これは、地盤を通して伝わった揺れの周期と振り子が最も揺れやすい「固有周期」と呼ばれる周期が一致して、「共振」現象によって揺れが増幅したからなのです。