バス業界、2025年は革命前夜? 「自動運転×電動化」で人手不足解消なるか? 運賃値上げ、AI導入――激動のバス業界の未来を徹底予測する
観光と生活の動線分離
続いて、次の2つのテーマについて説明する。 ●サステナビリティと環境問題への対応 サステナビリティは、バス業界にとって引き続き重要な課題であり、社会的な要請も高まっている。持続可能な社会の実現は世界的な目標であり、バス業界もその実現に貢献する必要がある。 前述の愛媛の伊予鉄グループは、二酸化炭素を排出しない電動車の導入に積極的に取り組んでいる。特に注目すべきは、小型から大型まで多様な電動路線バスを導入し、リムジンバス用の車両も用意している点だ。この取り組みにより、静かで快適な乗り心地を提供し、スムーズな発進が可能な電動バスを実現。また、災害時には電源としても活用できる機能を備えている。 今後も毎年10台の電動バス導入を目指し、2027年度までに合計50台の導入を予定している。この計画は、イニシャルコストとランニングコストを含めたトータルで見ると、電動車両はエンジン車両よりも優位性を持つことが予測される。伊予鉄グループに限らず、国内では電動車両の導入が進んでおり、いすゞエルガEVなどの国産車の登場がさらにその動きを加速させるだろう。 ●利用者ニーズの多様化とサービス向上 利用者ニーズは、観光地としての特徴を持つ京都のような都市では、観光目的と生活目的で大きく異なると予想される。観光都市と生活都市が共存する都市では、観光用と生活用の動線を分けるサービスが求められる。例えば、京都市の観光特急のように、観光専用路線を設けることで生活動線と切り分けることが必要だ。 さらに、ドライバーのストレスを軽減するためには、キャッシュレスサービスの拡充が重要だ。熊本市のように、全国交通系ICカードの廃止に向けた動きが広がる可能性もあるが、QR決済やクレジットカードのタッチ決済など、新たな決済方法がスムーズに導入されれば、キャッシュレス化が進み、利便性の向上が期待される。
ドライバー不足解消への道
最後のテーマについて説明する。 ●業界が直面する課題とその解決策 バス業界は依然としてドライバー不足という深刻な課題に直面している。給与の見直しや実際の給与額の引き上げが重要なテーマとなっており、2025年に向けてバス事業者の自助努力が続くと予測されている。 特に、大型2種免許の取得条件が緩和され、全国的に10代でも免許を取得できるようになった。この変更を活かし、若手ドライバーの雇用と育成が進むことが期待されている。給与水準が比較的低いものの、安定した職を求める若手ドライバーの採用が増加し、さらに女性ドライバーや外国人ドライバーの雇用も拡大すると見込まれている。 次に、財政面では依然として厳しい状況が続いている。モータリゼーションの拡大やテレワークの普及による定期券収入の減少、2024年問題にともなうドライバー不足の解消に向けた賃金捻出など、バス事業者の財政は大きな課題となっている。 特に、高速バスのドライバー不足という問題に対しては、地域との合意形成が重要だ。事業の厳しさを理解してもらうための情報公開や運賃引き上げに関する議論、さらに滋賀県のように交通税を導入することや交通バリアを軽減するための政策が必要とされている。これらの課題解決に向けて、広い視野での政策議論が求められている。 また、交通渋滞も大きな課題だ。違法駐車防止などの啓蒙活動は一定の効果が期待されるが、自動運転技術の普及が解決策となる可能性がある。自動運転技術を活用すれば、適切な車間距離を確保し、バス運行の円滑化が進むことが期待されている。そのため、自動運転技術の普及を促進する政策が必要とされている。